米携帯電話通信サービスの大型合併が頓挫しそうな様相を呈してきた。
米AT&Tとドイツテレコムは24日、AT&Tによる、ドイツテレコム子会社の米TモバイルUSA買収計画について、米連邦通信委員会(FCC)に申請していた買収計画の承認手続きをいったん取り下げたと発表した。
まずは司法省の独禁法訴訟に対処
これに先立つ22日にFCC委員長が「(買収計画は)委員会の承認基準を満たしておらず、さらに審査を進めるために聴聞会を開く必要がある」と述べていたが、両社はそうした手続きなどにかかる時間と労力を一時的に回避したい考えのようだ。
AT&TとTモバイルUSAの合併計画を巡っては、今年8月に米司法省が独占禁止法訴訟を提起している。
AT&Tとドイツテレコムは、この裁判での勝訴、あるいは司法省との和解の道を探っており、両社は「司法省からの承認を勝ち取るために注力する」と説明している。
FCCへの再申請は司法省との問題が決着した後に行う意向だ。
ただその一方でAT&Tは、買収が成立しない場合にドイツテレコムに支払うことになる違約金として、2011年10~12月期に40億ドルの税引き前損失を計上することも明らかにしている。
このことから米ニューヨーク・タイムズの25日付電子版は、「AT&Tの自信のなさを示すもので、この買収計画は頓挫したも同然だ」などと報じている。
2社には理想的なM&Aだが・・
AT&Tは今年3月に、TモバイルUSAを約390億ドルで買収することでドイツテレコムと合意したと発表した。これによりAT&Tは、通信インフラ強化のスピードが加速し、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる次世代通信技術の導入も促進できると見込んでいる。
ドイツテレコムは、巨額な投資が必要なうえ、競業企業の台頭で利用者数が伸び悩む米国市場から撤退したいと考えており、両社の思惑が一致したというわけだ。