ところが、米国携帯電話市場の寡占化が進むことを懸念する競合企業がこれに反対し、規制当局に買収阻止を働きかけた。
米国携帯電話サービスの利用者数は、ベライゾン・ワイヤレスが最も多く、この後をAT&T、スプリント・ネクステル、TモバイルUSA、メトロPCSと続いている。
もしAT&TとTモバイルUSAが合併すればベライゾンを追い抜き、米国最大の携帯電話サービス会社が誕生する。これにより、3位のスプリントとの差がさらに広がることから、スプリントなどのライバルが強く反発している。
一方でAT&Tは、米国の携帯電話市場は競争が激化していることから、独禁法違反には当たらないとしており、さらに米国民すべてがデジタル世代に移行できるようになり、地方などで雇用が創出されて経済成長につながるとも主張している。
米メディアの論調は「買収不成立」
しかしこの問題、AT&Tにとっては厳しい局面へと発展しそうだ。
AT&Tがたとえ何らかの形で司法省と合意できても、同社は電波免許を取得するためにFCCの承認を得なければならない。
AT&Tとドイツテレコムは今回FCCの承認申請を取り下げたが、FCCはそれを拒否することもできるし、再申請を禁じるという条件を付けて受理することもできるとニューヨーク・タイムズの記事は伝えている。再申請できなければ当然ながらこの買収は成立しない。
いずれにしても、今回FCCが聴聞会を要請した段階で、状況は行き詰まりを見せたようだ。米ウォールストリート・ジャーナルも、この買収計画は成功よりも失敗の公算が大きくなってきたなどと報じている。