トヨタ自動車の世界規模でのリコール問題、韓国勢の後塵を拝し続ける薄型テレビ・・・。このところ、世界市場での日本の製造業の競争力減退をうかがわせるニュースがかまびすしい。

 日本の主要企業の株価も、上値の重い状態が続いている。世界ベースで株式運用する投資家の関心も低い。

 だが、ある日本のセクターが「有望」として一部の投資家の熱視線を集めていることは、あまり知られていない。その業種は、日本人が当たり前すぎる存在として見過ごしてきた分野、コメに関係している。

建設機械の次は農業機械

 ブラジル、ロシア、インド、中国の「BRICs」と呼ばれる新興国の急激な経済成長が世界的に注目を集め始めたのは、2000年代初頭だった。実際、BRICs諸国は豊富な資源を武器にして、先進諸国の停滞をよそ眼に右肩上がりの成長を達成した。

 こうした時期、日本の株式市場で注目を集めたセクターが建設機械だった。ロシアの鉱山開発、あるいは中国の広大な道路網整備などの需要に合わせ、コマツや日立建機といった日本の建機トップメーカーの株価は急上昇を続けた。

 中でも、米キャタピラーとの間で熾烈なシェア争いを繰り広げたコマツ株は、BRICsブームが沸き起こっていた2003年から2007年までの間、10倍超の記録的な値上がりを記録した。

 実は、クルマやハイテク家電など、国際競争力を低下させている主力セクターに見切りをつけた海外投資家の一部が、「第二のコマツ」と狙いを定めているセクターがある。それは日本の農機メーカーだ。特にクボタや井関農機といった農機の主力メーカーである。

 なぜ両社株に注目が集まっているのか。答えは、急速な経済成長とともに、食糧、特に主食のコメ生産の効率化を迫られているアジアの新興国需要に、クボタや井関農機といったメーカーが強みを発揮する、との読みがあるからだ。

 「今さらクボタや井関農機か?」

 こんな声を上げる読者もいるかもしれない。確かに筆者もこの話題に触れた当初は、首をかしげた。失礼ながら、両社ともに株式市況で個別ニュースが伝えられる機会が少ないし、疲弊する日本の農業と命運を共にして需要が先細りする業種だとの固定概念があったためだ。

 だが、実際に投資対象として両社株を精査し始めた関係者から話を聞くと、その固定概念は覆された。