さて、見本市会場の方に話を戻す。例年通り、文句なしのスターパビリオンは牛や羊、豚にニワトリたちがいるコーナー。フランス各地から3000とも4000ともいわれる数の家畜が、この見本市のために花の都パリに大移動してくる。

子供たちに大人気の家畜コーナー

豚や羊のあかちゃんは大人気

 独特の臭気に包まれた会場では、小さな子供たちはもちろんのこと、その親たちもが童心に帰ったように顔をほころばせながら、牛の巨体に触れたり、生まれたばかりの仔豚の兄弟にカメラを向けたりしている。

 この会期中、牛たちのために45トンの干し草が運ばれ、また、乳牛1頭当たり毎日100リットルの水が必要だというのだから、全くの大事業である。

 この広大なパビリオンからさらに先に進むと、乳製品や果物の生産者たちのコーナーがあり、試食ができるブースの前などには黒山の人だかりができている。

 ちなみに、パリで暮らし始めた当初から私はこの見本市が好きで、何度も来ているのだが一度としてその全容を把握できたことがない。

 まず、スターパビリオンである家畜たちのオンパレードを巡るのに相当の時間とエネルギーを費やし、さらに奥の食べ物の匂いに惹かれ、と、そこまではいいのだが、そのさらに先に展開するパビリオンのすべてを見て回ることは、ほぼ不可能だと思っている。それくらい、この見本市は巨大なのである。

日本のブースは黒山の人だかり

ドイツはフランクフルトにオフィスがある「金印わさび」の小西康介さん。 寿司ブームもあって、わさびをはじめとする食材は既にヨーロッパに定着。 「ショウガはありますか?」と、ガリを「指名買い」するお客さんもいるとのこと

 ただし、今年は1つ目的があった。それは、日本のブースを見ること、である。「世界の美味」というタイトルがついたパビリオンは会場の奥の方。その一角で、ロシアやイタリアのスタンドに囲まれるようにして日本のコーナーはあった。

 この見本市への参加は今回で4年目。農林水産省の主導の下、日本貿易振興機構(ジェトロ)が実際の運営をしているという。東京からやってきた綿貫大祐さんとパリセンターの村山牧衣子さんというジェトロのお2人の説明を聞きながら、ブースを見て回る。

 陳列されているのは、日本人にはおなじみの、また海外在住者にとっては懐かしさいっぱいの日本食材。米、味噌、しょうゆ、お茶、お酒、スナック菓子などがきれいに並べられている。

 「最初の年などはパリで調達できる日本食材だけを置いていたのですが、今は日本での公募を行って、セレクションしたものを持ってきています」と、綿貫さん。

 「まず、現地の販売規制をクリアできる商品であることが大前提ですが、フランス市場に受け入れられるかどうか、インポーターがつくかどうかが判断基準になります。それと、この見本市だけではなく、今後の輸出促進を視野に入れているので、生産者がどれだけ輸出に熱心か、それに対応できる体制が整っているかというのも大事です」