2009年12月16日、世界有数の天然ガス資源を有する中央アジアの国の元首が、日本を初めて訪問した。その国の名はトルクメニスタンといい、元首は同国第2代大統領のグルバングル・ベルディムハメドフ氏である。

特異な独裁国家トルクメニスタン

候補地ではないトルクメニスタン、なぜか「五輪シティ」建設へ

トルクメニスタンのグルバングル・ベルディムハメドフ大統領〔AFPBB News

 日本ではあまりなじみのないこのトルクメニスタンという国は、ソ連崩壊の際に初代大統領に就いた故サパルムラト・ニヤゾフ氏が終身大統領となって、個人崇拝に基づく独裁体制を築き上げた国であり、ニヤゾフ前大統領存命中は「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれていた。

 ニヤゾフ前大統領への個人崇拝ぶりを示す例は枚挙に暇がない程であるが、例えば、首都の中心部に設置された前大統領の「金像」(←「銅像」ではない)は、前大統領が常に太陽の方角を指し示すように常時回転している。

 また、前大統領の著作『ルフナマ』(「魂の書」の意)は、コーランに匹敵する重要な書物として国民の必読文献とされ、同書の内容理解が学校の成績や職場での昇進等に影響した。

 さらに、前大統領は自らを「トルクメンバシュ」(=「トルクメンの長」の意)と称し、2002年には月の名も変更して1月を「トルクメンバシュ月」とするなど、特異な政策を次々と展開した。

天然ガス埋蔵量は世界第4位

ニヤゾフ大統領が急逝 - トルクメニスタン

2006年1月、 ウラジーミル・プーチン大統領(当時)と握手するサパルムラト・ニヤゾフ大統領〔AFPBB News

 国内で個人崇拝体制を築いたニヤゾフ前大統領は、外交面においても、確認埋蔵量世界第4位(シェア4.3%)という豊富な天然ガス資源を背景に(表1参照)、独自の外交路線を取った。

 同国は、旧ソ連諸国への影響力を維持しようとするロシアとも距離を置き、1995年には「永世中立国」となり(国連総会で承認)、さらにバルト3国以外の旧ソ連構成国で結成された独立国家共同体(CIS)からも離脱の動きを見せた(2005年に正規加盟国ではなくなり準加盟国となる)。

 しかし、2006年12月のニヤゾフ氏死去後、後継大統領となったベルディムハメドフ氏は、衛星放送やインターネットの普及をある程度認めるなど、ニヤゾフ路線の軌道修正を図っている。

 また、同国の天然ガスの生産量は世界第13位(シェア2.1%)であり、埋蔵量の規模と比較すると少ない(表2参照)。つまり、埋蔵量は巨大であるにもかかわらず、既に開発されているガス田の規模は小さいということになり、今後のガス田開発の余地が大きいと言える。

 この新規ガス田開発の余地を目指して、ロシア資本や欧米オイルメジャーのみならず中国資本も参入の動きを見せている。