日本人の「国産」「天然物」信仰はスキだらけ

食に関するウソ・ホント~前篇

2009.12.17(Thu)森田 由子

BSEのリスクは完全には取り除けない

 最後に、BSEの問題に触れたい。たった1頭、しかも高齢の牛だが、今年の初めにBSE(牛海綿状脳症)が国内で発生している。BSEはまだこの世から消えたわけではない。

 BSEは、体内にもともとある正常なタンパク質が、「プリオン」と呼ばれる異常な型に変化し、一定量以上蓄積されると発病すると考えられている。そこで、プリオンが蓄積されやすい危険部位の除去、検査、若齢での食肉処理などにより、プリオン汚染肉が他の生き物の口に入らないよう、細心の注意が払われている。

 つくば市にある動物衛生研究所は、プリオンの蓄積が特定危険部位から進むことを突き止め、わずかに含まれるプリオンを増幅して検出感度を上げる検査法の開発に取り組んでいる。

 しかし、今の方法をどれだけ洗練させても、BSEの牛が絶対に出ないようにすることはできない。

 もともと正常な牛でも、プリオンを摂取すれば発病する可能性がある。また、プリオンを摂取しなくても、正常な遺伝子が変異し、自らプリオンを作り出す可能性もある。ゼロリスクを目指すなら、牛からプリオン蛋白質の遺伝子を除くしかない。

 実は、2006年、そうした遺伝子組み換え牛が実験的に作られている。その子孫が市場に出回ったという話は、今のところ聞こえてこない。しかし、いつかBSEのリスクをめぐり、消費者が「天然の牛か、遺伝子組み換えの牛か」という選択を迫られる日が来るかもしれない。

 「安心して食べたい」という思いは誰もが共通して持っている。だが、やみくもに心の問題である「安心」だけを論じても、出口は見えない。

 安心のよりどころとなる「安全」の意味を知り、それを支える科学や技術を理解することが、安心への出発点になるのではないだろうか。

(後編に続く)

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