今、米国でオンラインDVDレンタル大手、ネットフリックス(Netflix)のサービス運営方針を巡って波紋が広がっている。同社には宅配形式によるDVDの貸し出しサービスと、インターネット経由でデジタルコンテンツをパソコンやテレビに配信するストリーミング配信サービスがあるが、今年7月、突如としてこの2つのサービスを分離すると発表した(PDF書類)。

実質6割の値上げに不満の声

 従来、利用者は月額9.99ドルで2つのサービスを利用できた。しかし新たなサービス提供形態では、それぞれの料金を月額7.99ドルとし、これまでのように両方を利用するには7.99ドルの2倍、つまり15.98ドルがかかることになった。

 同社サービスの利用者数2500万人のうち、2つのサービスを利用している顧客は1200万人。「膨大な数の顧客に対し突如として6割増しを実施するとは暴挙」などとソーシャルメディアなどで不満の声が上がっていた。

 顧客離れが進むとの懸念が広がる中、同社は9月15日に株主宛の書簡を公開し、サービス分離が業績に及ぼす影響について説明した(PDF書類)。この中で同社の会員数が100万人減少する見込みだと発表し、これを受けて同社株は15%下落した。

 そうした中、ネットフリックスのリード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は、9月18日に、公式ブログへの投稿で謝罪するとともに、改めて顧客に理解を求めた。

ストリーミングの時代を見据えた決断

 ブログへの投稿でヘイスティングスCEOは、「皆さんへの説明が足りなかった。お詫びを申し上げたい」と謝罪。その一方でサービスの分離や、新たに定めた料金には変更はないとし、事業分離が同社にとって必要不可欠なものだと説明した。

 この中で興味深いのは、全米第2位の書店チェーン、ボーダーズが電子書籍事業に失敗し経営破綻に至ったことや、かつてダイアルアップサービスで3000万人規模のインターネット接続サービス会員を抱えていた米AOLがやがて衰退していったことを例に挙げている点だ。