「中小企業が資金繰りに困っている」という問題がクローズアップされている。日銀短観の結果などからもその傾向が見て取れるのだが、金融機関の現場は少し違う感覚を持っているようだ。
例えば、政府系金融機関が統合した日本政策金融公庫。旧中小企業金融公庫から業務を引き継いだ中小企業事業ではさほど感じていないようだが、前身が旧国民金融公庫である国民生活事業では引き合いが多いらしい。またこの不況下で倒産件数は増えているが、負債総額は増えていない。倒産の小口化が進んでいるようだ(帝国データバンク)。
つまり、現在資金繰りに困っているのは主に零細企業や個人商店なのである。こうした人たちの資金繰りが悪化しているのは、金融市場がリーマン・ショック以降に逼迫したからではない。景気が悪くなって売上高が落ち込み、運転資金に困ってきたためだ。それなら、この問題に対する即効薬は資金繰り支援ではなく、「景気回復」であることは間違いない。
もちろん、こうした企業の多くが構造的な問題を抱えていることも事実である。高齢の経営者が意欲を失い、また最近のグローバル経済化や地方の過疎化などに対応できず、極めて古いビジネスモデルで行き詰まっているケースも多い。
実際、赤字の恒常化で税金を納めることなく、ほとんど経費で処理して何とか日々を暮らすだけの経営も少なくない。このような企業は淘汰されるべきだというのも1つの理屈ではある。しかしながら、この零細企業・個人商店向け融資については、金融自由化以降の大きな制度的問題があることを忘れてはならない。