選挙戦突入後も、麻生は「カネがないなら結婚しない方がいい」と失言を重ねた。その上、「政治は博打じゃない。(民主党に)ちょっとやらせてみようか、というのは違う話だ。全く優先順位が分かっていない人が多すぎる」と聴衆への八つ当たりも飛び出した。
麻生の「オウンゴールの連発」には、民主党サイドも「選挙戦に入って全く信じられない発言をするもんだよ」と呆れるばかりだった。
「利益配分政党」から生まれ変われない自民党
次に、民主党ベテラン議員の分析に耳を傾けよう。民主圧勝・自民大敗の理由は何か。
「自民党が(社会党の)村山政権をつくった時から、こうなることは歴史の必然だった。それ以前の細川政権誕生で自民党は野党になり、与党としてのアイデンティティーを失い、危機に陥っていた」
「(下野した時)『国民にビジョンや政策を示せ!』という天の啓示があったはずだ。にもかかわらず、(自民党は)理念も政策もへったくれもなく、権力にしがみつこうとする政党になってしまった。あの時、新しい政党に生まれ変わるべきだったが、与党であり続けたいばかりに、世論にすがりつくような政党になってしまった。自民党は村山政権誕生で歴史的使命を終えたのに、新しい政党に生まれ変われなかった」
「自民党がジリ貧を続けていた時、壊し屋・小泉純一郎(元首相)が現れた。小泉が『自民党をぶっ壊す』と叫んで登場した時には、『ニュー自民党』になるとの期待感が生まれたが、それは『あだ花』に過ぎなかった。自民党は再生できず、世論が求める構造改革を棚上げにした。結局、業界や官僚と結託した利益配分政党でしかなかった・・・」
長期政権にあぐらをかき、官僚主導の税金無駄遣いを止められない自民党政権。それに対して有権者の不満が爆発したのが、今回の総選挙だった。
歴史的な敗北を受け、麻生はNHKの番組で「自民党に対する積年の不満を拭い去ることができなかった。甘受しなければならない」と率直に語った。この発言は正しい。麻生は権力を失い、素直に自らの「力不足」を認めていた。驕り高ぶらず、偉ぶるわけでもない麻生を見るのは、実に久々のような気がした。
どうする小沢の処遇? 失敗許されぬ鳩山人事
さて、「政権与党」となる民主党に話を移そう。
小沢氏の処遇は・・・(参考写真)〔AFPBB News〕
まず、焦点となるのが人事である。「首相」鳩山由紀夫の下、官房長官、財務相、外相、政調会長が兼務する国家戦略局担当など、重要閣僚に誰が就くのか。さらに注目されるのは、選挙担当の代表代行・小沢一郎の処遇である。
小沢は表向きのポストに拘らない姿勢を示しているが、本音では党運営の実権とカネを握る「幹事長狙い」とされる。しかし、2010年夏の参院選までは小沢をあまり表に出さず、選挙担当に専念させておく方がよいとの声が党内には根強い。もし小沢が初当選の新人議員を「チルドレン」として組み込めば、グループは大膨張する。党内の非小沢系議員は「小沢幹事長」に抵抗し、幹事長・岡田克也の留任を求める声が出ている。
9月14日の週に召集される特別国会で首相指名選挙が行われた後、鳩山は一気に人事を決める意向だ。それまで人事は水面下でじっくり検討するだろうが、早くも内閣の要となる官房長官には代表代行の菅直人が有力視されている。
鳩山はどのような人材を抜擢して、新体制をつくるのか。過去、代表時代の幹事長人事で失敗し、批判を浴びた経緯もある鳩山だが、国のトップリーダーとして人事の失敗は許されない。


