ついに政権交代が実現しました。それでも、医療現場に立つ私としては、何かもやもや感が残っています。

 それは、選挙の争点として年金や医療に対する国民の関心は高いという調査結果が出ていたにもかかわらず、 医療政策に関するマニフェストについて、ほとんど議論されないまま選挙が終わってしまったからです。

 高速道路無料化とか、注目選挙区の人間ドラマも注目すべき点ではあったと思いますが、選挙前にあれだけ多くの時間を割いて報道されていた「たらい回し」という言葉はどこへ消えたのでしょう。一体、どの党のマニフェストがたらい回しをより少なくしてくれるのか。その検証は、ほとんどありませんでした。

 そんな中、「週刊ダイヤモンド」(8月15日/22日合併号)が「頼れる病院/消える病院」という特集を掲載していました。

 マスコミが医療を取り上げて真剣に議論してくれるのは、医療従事者にとって大変ありがたいことです。現場で働いている者としては、「よくぞ取り上げてくれた!」と拍手喝采したくなるような気持ちです。

 一方で、独自の指標で作成した病院ランキングには、「これはちょっと違うんじゃないかな」と思う部分もありました。今回は、「よくぞ取り上げてくれた」部分と、病院ランキングについて率直に感じたことを検証してみたいと思います

よくぞ取り上げてくれた! 自治体病院の事務職員の高給

 この特集では、医療機能に加えて、経営状態で病院をランキングしていました。「医療は金もうけのために行うわけではないが、赤字垂れ流しの病院は患者に対して高度な医療サービスを提供できなくなる」という趣旨からだそうです。

 そこで明らかになったデータの1つに、全国にある自治体病院の事務方の高給ぶりがあります。自治体病院の事務方は、大半が市役所や県庁からの出向です。民間病院の事務方が平均470万円なのに対して、自治体病院は690万円。なんと、その差は220万円もあったのでした。

 医師の収入では官民格差はどれくらいあるのでしょうか? ランキング上は僻地の医師の給与が2500万円超でトップを独占してしまっており、実態が見えてきません。

 別ページのコラムで「まさにワーキングプア、非常勤医の年収は300万円台」と題した記事があり、こちらが参考になります。

 実は、国立病院や大学病院の最前線を担っている医師は、多くが非常勤扱い。給与は年収120万~400万円程度がほとんどだということです。大学病院の場合、常勤医師は助教以上ということですが、ポストは1つの講座で10程度しかありません。半数を超える医師は非常勤扱いということを意味しています。