デフレの長期化、人口減少等々、日本経済を取り巻く環境は一向に好転の兆しが見えない。こうした中、世界シェアの獲得、あるいは成長著しい新興国の需要を取り込もうと、日本の多くの企業が合併・買収(M&A)に積極的な姿勢を示している。

 円高傾向が定着し、海外物件の割安感が生まれていることも、増加の背景にある。ただ、こうした傾向は本当に妥当なのだろうか。製薬業界を通じて分析してみる。

「2010年問題」で製薬業界はM&Aラッシュ

 今回、日本の製薬業界を取り上げたのは、大型医薬品の特許が立て続けに切れる「2010年問題」に備えるため、ここ数年で最もM&Aを活発化させた業界の1つだからに他ならない。

 2008年には第一三共がインドの後発薬メーカーのランバクシーを、武田薬品工業ががん新薬の米ミレニアムを、2010年にはアステラス製薬が同じくがん新薬に強みを持つ米OSIをそれぞれ傘下に収めた。

 各社の狙いは、自社製品ラインアップ強化のほか、主力自社製品の特許切れに伴う収益減をカバーするためだ。

 新薬の特許が切れれば、後発薬メーカーが続々と類似製品を出すのが業界の定めである。「世界シェアを高めることで、収益力を確保する狙いがあった」(外資系証券アナリスト)のは間違いない。

 自動車や電機などと比べ、日本の大手製薬会社は世界シェアが圧倒的に低いとされてきただけに、「近年のM&Aの増加は必然だった」(同)とも言える。

 日系メーカーのM&Aについては、数千億円から1兆円規模と高額になった案件が大半で、経済紙誌の大見出しをご記憶の向きも多いはずだ。

 ただ、華々しいヘッドラインとは裏腹に、「一連の投資が芳しい成果を上げていないのでは」との懸念も機関投資家の間で渦巻いているのだ。 

結局は言い値でつかまされただけ?

 「本当にデューデリしたのか?」

 今春、ある日系大手製薬会社が開催したIR(投資家向け広報)会議の席上、参加した国内運用会社の幹部から厳しい叱責の声が上がった。

 怒声の背景には、こんな事情が潜んでいる。