いつの時代にも若者論というものが存在する。時にそれは世代間論争として扱われたり、政治や経済問題として扱われたりもしてきた。

 ここ最近の若者論の背景には、ひきこもりやニートの増加、あるいは若者による理不尽な殺人、また昨今の貧困問題などが横たわっている。

 最近になって明らかになってきたことは、若者が二極分化しているという事実である。つまり、一方の極には、競争重視の社会に嫌気が差したり、挫折したりすることで、ひきこもりやニートになってしまって、内にこもる多くの若者たちがいる。

 他方で、もう一方の極に、貧困問題で先の見えなくなった社会を変えようと、外に向かって立ち上がる多くの若者たちがいるのである。これは、世界的な不況のせいで貧困問題が深刻になったことに関係しているようだ。

 しかし、いずれにしても未来を担うのは若者たちである。外に向かう若者たちだけでなく、内にこもる若者たちも、できれば一緒に一つの社会を作っていけるような方策を考えなければならない。

働く喜びを教える「サポステ」

 その1つのきっかけとして、行政やNPO等が中心となって、ひきこもりやニートの社会復帰を支援する取り組みが盛んに行われてきている。私が住む山口県周南市にも「しゅうなん若者サポートステーション(通称:サポステ)」という組織があり、注目を浴びている。

 登録している若者たちに講演を頼まれた関係で、施設の方に話を聞いてみた。

 サポステは開設からちょうど1周年を迎えたばかりなのだが、登録者の約48%にあたる81人もの若者が進路を決めるなど、全国平均の約28%を上回る大きな成果を挙げているそうだ。

 ボランティアや職場体験などをやらせて、やる気を高めているという。確かに人や社会に貢献する喜びは、働くことの意義を感じさせてくれる。今は親に面倒をみてもらっていてお金に不自由しないから、働く気が湧いてこないという人もいるかもしれない。しかし、働く喜びは実際にやってみなきゃ得られないのだ。サポステはそれを教えてくれる。

高学歴の若者もボランティア活動に

 実は、元々ひきこもりやニートなんかではなく働く喜びを知っている若者にも、今、変化が起きているという。

 2009年5月12付の日本経済新聞で、「失業救済 若者の挑戦」という特集記事を目にした。貧困問題が深刻になる中、失業や貧困救済のボランティア活動に大学生らの若い世代が続々参加しているというのである。

 しかも高学歴のリーダーたちが組織を引っ張っているという。これは明らかに「年越し派遣村」を組織した湯浅誠氏の影響だろう。彼は東大卒だが、ボランティアで社会を動かして注目されている。

 多くの若者たちが湯浅氏のような活動をやりだしたことは、貧困問題の思わぬ副産物だと言えよう。自分だけ勝ち組になればそれでいいというのではなくて、困っている同世代、あるいは路上の人たちを救おうというのだから。