筆者が「中国株式会社論」に行き着いたのは決して偶然ではない。前回説明したように、中国を「国家」と捉え、国家の「統治機構」が「国民」を如何に統治するかという観点から中国を分析する限り、どの発展モデルも現在の中国には当てはまらないことが分かったからだ。
こうした欧米型政治学的アプローチの「陥穽」から抜け出すにはどうしたらいいのか。これが筆者の原点である。北京の日本大使館で広報文化を担当していた頃、今から5年以上も前の話だ。もちろん、その答えは容易には見つからなかった。
もしかしたら、現在の中国指導者は現状を、政治学的な意味での「国家統治」とは考えていないのではないか。念頭にあるのは、国民の福利厚生よりも、中国共産党という政治組織による指導の存続ではないのか。
こう思い始めた途端に、彼らが私たちの想像とは全く異なる論理で、私たちが「中国」と呼ぶ存在を「マネージ」しているだけなのかもしれない、という発想が芽生えてきた。
統治者の視点からの分析
欧米型政治学では、様々な政治現象の中から一般的な事象を理論化、類型化することによって、現在と将来を分析する手法が一般的だ。しかし、ここではあえて「一般理論化」ではなく、実際に中国で統治する人々の立場から、現在の中国という政治現象を分析してみたい。
筆者の見るところ、今の中国政治指導者たちの本音は次の通りである。
1.中国には共産党の指導が絶対に必要であり、党主導の政治システムは維持すべきである
2.共産党の指導を維持するため、政治の民主化は回避すべきである
3.権力が銃口から生まれる以上、人民解放軍を「党の軍事組織」として今後も維持すべきである
4.政治の民主化を回避するため、共産党員や党に歯向かわない非党員の生活は保証すべきである
5.それ以外の反共産党不満分子のうち、物質金銭で懐柔できない連中は徹底的に排除すべきである
6.欧米からの民主化圧力にも耐え得る、独裁でも民主でもない独自のシステムを確立すべきである
7.そのためには、欧米の経済システムを可能な限り取り入れ、グローバルスタンダードを確保すべきである