中国国務院は5月18日、都市部での家電などの買い換え促進策である「以旧換新」政策を発表した。対象となる家電向けに中国政府は20億元(300億円弱)を投入することを決めた。消費のてこ入れとともに、家電リサイクルのシステム確立を狙った政策だ。

 消費者は、新製品を購入する時に古くなった家電を店頭に持ち込むと、割引の権利を得ることができる。まずは北京市、上海市、広東省、天津市、江蘇省、浙江省、山東省、福州市、長沙市で実施される。

政府の発表を受けて電機、自動車メーカーの株価が軒並み上昇

 割引の対象となるのは、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンの5品目。この施策の一方で、クルマの買い換え促進策も強化することを決め、予算を10億元から50億元に積み増した。この政策発表を受け、18日には多くの中国の電機系メーカー、自動車メーカーの株価が軒並み上昇した。

 蘇寧電器などの大型家電量販店で家電製品を購入する消費者の場合だと、商品価格の10%を政府が負担してくれるうえに、量販店でのさらなる値引きも期待できるので、お買い得感は一層増しそうだ。中国サイト「証券之星」によると、「今回の促進策の対象となるエリアの人口は、中国の都市部全体の38%に当たる2億2000万人であり、しかも特に経済力のある地域なため、高い効果が期待できる」と分析している。

 今回の政策が中国のリサイクル事情に及ぼす影響についてはどうだろうか。中国政府は今年3月に「廃棄電器電子産品回収処理管理条例」を発布、2年後の2011年1月1日に実施するとしていた。今回の新しい政策によって、処理業者までの廃棄家電の運搬費用も政府が肩代わりすることになった。

 これまで中国の家電リサイクルは、メーカーも担当してはいた。しかし、実際には廃棄製品がメーカーに流れることはなく、悪質な廃品業者が独自に回収する場合がほとんどだった。そのため、中国政府が理想とするリサイクルの実現とは程遠いのが実情だった。

 消費拡大へのてこ入れに合わせる形で、電子ゴミによるこれ以上の環境汚染に何としても歯止めをかけたいという中国政府の意図が伝わってくる。

年間1億台以上の家電が不正に捨てられている

 中国家電協会の統計では「各家電を8年から10年周期で購入すると仮定すれば、理論上、年にテレビが3500万台、洗濯機が1800万台、冷蔵庫が1500万台、エアコンは1000万台弱、パソコンは3000万台弱、合計で年間に1億台の家電が、不正に捨てられている」と分析する。

 中国は金融危機後、景気拡大期に大きな格差がついてしまった農村部と都市部の溝を少しでも埋める目的もあって、主に農村部で景気てこ入れ策を打ってきた。まず、白物家電や15インチクラスのブラウン管テレビすら普及しきっていない農村部を対象に購入費用の13%を政府が負担する「家電下郷」政策を実施。その後、実施地域を中国全土の農村部に拡大した。