(写真:AP/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムは、物流の最終拠点から目的地までのラストマイル配送を効率化する新システムを導入する。AI(人工知能)を活用した、配達ドライバー用の新技術を開発した。各配達地点で荷物の識別作業を約1分で済ませられるようになる。1日当たり約100軒の配達をこなすドライバーの負担を軽減できるという(発表資料)。

配達すべきは緑の「◎」、他は赤の「✕」

 「Vision-Assisted Package Retrieval」(視覚支援による荷物識別、VAPR)と呼ぶ技術を開発した。ドライバーが配達地点に到着すると、その地点で届けるべき全ての荷物に緑色光の「◎」マークを、それ以外の荷物には赤色光の「✕」マークを照射する。これにかかる時間はわずか数秒だという。従来は、配達地点に停車する度に荷物を整理したり、バーコードをモバイルデバイスで読み取ったり、顧客の名前・住所を確認したりしていた。だが、今後はその必要がなくなる。緑色マークの荷物を見つけ、手に取り、顧客宅に運ぶだけ。誤配達も防げる。

 これを実現するために、車両の天井にカメラとLEDプロジェクターを設置した。VAPRは、周囲の状況を処理した後、複数のバーコードを同時検出して、それぞれの内容を読み込む。様々な照明条件やパッケージの形態でも荷物ラベルを認識できるよう機械学習(マシンラーニング)モデルをトレーニングした。トラックに搭載の配送ルート・ナビゲーションシステムとも統合されている。VAPRは、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が開発した機械学習やIoT(モノのインターネット)などのテクノロジーを車内環境で実現したものだとアマゾンは説明する。

1配送ルート当たり30分超の時間短縮

 同社は2025年初頭までに米国内でVAPRを搭載したEVトラックを1000台導入する予定だ。米南部テネシー州ナッシュビルで開いた技術紹介イベントで、アマゾン・ワールドワイド・ストアズのダグ・ヘリントンCEO(最高経営責任者)は、「配送を迅速にすると、顧客はより多くの買い物をするようになる」と述べた。