上海新店舗のオープニングセレモニーで自らドアを開けるクックCEO(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルがAI(人工知能)の自社端末への導入に関して、中国のIT大手、百度(バイドゥ)と協議していることが分かった。バイドゥは「文心(Ernie)」と呼ぶ、大規模言語モデル(LLM)を手がけており、中国の主要なAI企業の1社である。

iPhoneの生成AIにはパートナー企業が必要

 AI分野で後れを取ると指摘されるアップルは、スマートフォン「iPhone」などの端末のAI機能を強化する取り組みを進めている。自社でも生成AIモデルを構築しているが、パートナーとの協業も検討している。

 先ごろは、米グーグルの生成AIモデル「Gemini(ジェミニ)」をiPhoneに組み込む交渉を進めていると、米ブルームバーグ通信が報じた。アップルは対話型AI「Chat(チャット)GPT」を手がける米オープンAI(OpenAI)とも協議中だと報じられている。

 ところが、中国は「グレート・ファイアウオール(金盾)」と呼ばれるインターネット検閲システムがあるなど情報統制に厳格で、国外の生成AIを認めていないとみられる。米国製などは、当局の意に反するコンテンツを生成する恐れがあると考えているようだ。

中国では外国製生成AI利用できず

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、中国政府は自国のサイバー空間規制当局による審査を経ない生成AIモデルの公開を認めていない。この規則は2023年8月に導入された。当局はこれまでにバイドゥのErnieなど40以上のAIモデルを承認しているものの、オープンAIのChatGPTやグーグルのGeminiなど、日本でも人気のあるAIモデルは中国で利用できない。

 アップルの競合である韓国サムスン電子の最新スマートフォンは、中国国外でGeminiを、中国国内ではバイドゥのErnieを利用し、AI機能を強化している。そこでアップルもバイドゥと提携し、中国向けiPhoneにErnieを採用したいと考えているようだ。