カナダに「亡命」するアメリカのLGBTQ
──ところで、昨年団体名を「2SLGBTQI+商工会議所」からカナダ・クイア商工会議所に変更されたそうですが、それはなぜですか?2Sはカナダ独特の言い方ですよね?
シュールマン:はい。男女を区別しない「2S(2スピリット)」というのは、カナダ先住民族独自の言葉です。私たちの商工会議所は当初、ゲイ&レズビアン商工会議所として発足しましたが、LGBT商工会議所になり、2SLGBTQI+商工会議所(Iはインターセックス、+はそれ以外)になりました。ただ、長くなってわかりにくいこともあり、去年みんなで話し合って包括的なクイアに変更しました。名前が変わっていくのは進化の証しです。
──性的マイノリティへの攻撃を強めるトランプ政権下で、隣国アメリカのクイアな人たちは苦しんでいると推測しますが、カナダに「亡命」したいといった問い合わせは来ていますか?
シュールマン:あります。ビジネスをカナダに移したいという相談は実際に受けています。そのため、去年私たちは「ニューカマー・プログラム(新たに来た人のためのプログラム)」を始めました。新しい土地でビジネスを始めるのは苦労を伴いますから、できるだけの支援をしたいと思っています。
──やはりそういう人たちはいるのですね。トランプ大統領はカナダを51番目の州呼ばわりしたり、関税をめぐっても難題を吹っかけたりしています。
シュールマン:アメリカはカナダにとって最大の貿易相手国ですから、CQCCにとっても重要な相手です。例年、大規模な貿易使節団をアメリカに送ってきましたが、去年はアメリカへの派遣をやめました。
もちろん、ビジネスは変わらず続けています。でも今年は他の市場を開拓するために、日本をはじめ、台湾やブラジル、コロンビアなどアメリカの外に目を向けて貿易相手の多様化を図っています。価値を共有する相手とビジネスを広げていきたいと思っています。
インクルーシブな経済を拡大し、経済全体を成長させ、その一環として社会変革を起こしていくことはとても大切なことであり、カナダをはじめ他の国がアメリカの不在によって生じた空白を埋めていかなければならないと思います。今はみんながその努力をしなければいけない時だと思っています。
貿易使節団のメンバーやシンポジウムのパネリストと
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ダレル・シュールマン Darrell Schuurman
CQCC共同創業者兼代表取締役 起業家として旅行業に関わる傍ら、カナダ国内におけるサプライヤーの多様化を提唱してさまざまなNPOや基金を立ち上げ、2003年にCQCCの前身であるカナダ・ゲイ&レズビアン商工会議所を立ち上げた。カルガリー大学卒業。ウエスタン大学より経営学修士号取得。
草生 亜紀子(くさおい・あきこ)
ライター、翻訳者。産経新聞、ジャパン・タイムズ、新潮社などを経て独立。文筆業と並行して、NGOピースウィンズ・ジャパンでウクライナ支援などの仕事にも携わる。著書に『理想の小学校を探して』『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事』。中川亜紀子名での訳書に『ふたりママの家で』がある。


