終盤に失速した原因は?

 30km過ぎまでは日本記録を上回る超高速レースを見せた吉田響だが、終盤は力尽きた。元マラソン日本記録保持者である日本陸連の高岡寿成マラソン担当シニアディレクターは吉田の走りをこう分析した。

「吉田選手がペースメーカーの前を走るシーンを眺めていて、このまま行けるんじゃないのか、という期待を抱きました。ただ、終盤にペースを落とすことになったのは、これからマラソンで成功していくために必要な経験になるでしょう。初マラソンということで、どのようなペース配分で42.195kmを走り切るのか。その感覚の読み違いがあったのかなと感じています」

 それでは終盤に大きく失速した原因はどこにあったのか。

 まずはフィニッシュ時に気温が20度近くまで上昇した「暑さ」が挙げられる。吉田は暑さを苦にしないタイプだが、前半でスペシャルドリンクを3度も取り損ねたのが痛かった。水分はゼネラルテーブルで摂取できるが、スペシャルドリンクには糖質などのエネルギー源が含まれているからだ。フィジカル面だけでなく、メンタル面でのダメージもあっただろう。

 それからペースメーカーの前に出るのが早すぎた。走るスピードが速くなるにつれ風(空気)の抵抗は高まっていく。そのため一人で走るより、集団のなかで走った方がエネルギー効率は良くなるからだ。もし30kmまで集団のなかでレースを進めていれば、終盤はぶっち切っていたかもしれない。また沿道の声援にジャスチャーで応えるなど余計な動きも気になった。

 小さな原因が積み重なって、終盤の大きなエネルギーロスになったと考えられる。

 救護室に直行した吉田に代わり、サンベルクスの田中正直総監督が取材に対応した。

「30kmまではペースメーカーについていく予定」だったが、「行けるんだったら行ってもいいよ」(瀧川大地コーチ)の指示もあり、リズムがうまく合わなかったために、「前半から独走したかたちかと思います」と話した。田中総監督は独走したレース展開に驚きながらも、ある程度は予想をしていた部分があったようだ。

 一方、「前半でスペシャルドリンクを取ることができていなかったのが心配でした」と不安が的中。「結果的にエネルギーが足りなくなり、この暑さでかなりの脱水症状になってしまった」と反省点を口にした。

 それでも、「初マラソンで脱水症状になりながら、2時間10分を切ったのはいいところ。次回はしっかり修正したなかでいい記録を出していきたい」と今回の失敗を生かしていきたい考えを示した。