これまでベトナムのインフラ整備はODAに頼ってきた。しかし中進国になった現在、インフラ整備を他国に頼ることは難しい。

 付言すれば、ベトナムは中国が提唱する「一帯一路」に参加したものの、その実施には極めて消極的であった。それは歴史的に両国が何度も戦火を交えたためだ。ベトナムは中国を恐れ警戒している。その結果としてスリランカのように債務の罠にはまることはなかった。

 ベトナムは米中対立の中で、米国、中国と双方とうまく付き合って行かなければならないが、それは難しい作業になる。

権力を一元化する狙いとは

 ベトナム共産党は中国と同じような構造になっている。共産党のトップに政治局があり、そのメンバーが政府の要職を兼ねている。

 中国では政治局上位7人によって常務委員会が構成される。ベトナムでは政治局員の上位4人が共産党書記長、国家主席、首相、国会議長に就任する慣例があった。この4人は「4柱」と呼ばれ中国共産党の常務委員のような役割を果たしていた。

 だがこの1月に開催された第14回共産党大会で、トー・ラム氏が政治局員に再選され、書記長と国家主席を兼任する見通しになっている。

 この権力一元化には2つの理由がある。1つは、ベトナムが現在「中所得の罠」に陥りつつあり、この壁を乗り越えて先進国入りするためには、強力な統一指導体制が必要だということ。

 もう1つは、共産党書記と国家主席が別人では、トー・ラム氏がトランプ大統領や習近平国家主席とのトップ会談において、強い立場で交渉することができないという判断によるものだ。