迂回輸出の中継点になったベトナム

 ただその中身が問題だ。2025年のベトナムの米国への輸出は1532億ドルと全体の3分の1を占めていた。その一方で中国からの輸入は1860億ドルにもなる。輸入の3分の1は中国からである。この数字から分かるようにベトナムは中国から部品を輸入して、それを組み立てて米国に輸出している。まさに中国から米国への迂回輸出の中継点になっている。

 一昨年トランプ氏が大統領に選出された頃から、ベトナムは密かに中国からの工場移転ブームに沸いた。中国企業による工場建設ラッシュが起きた。日系企業もベトナムにシフトしているが、その動きは鈍い。日系企業はサプライチェーンの再構築が難しいと言ってなかなか移ってこない。それに引き換え中国企業は素早く動く。とにかく少しでも利益になるのなら行動に出て、動いてから考える。そんな感じだ。その辺りは国民性の違いを感じる。

多くの中国企業が工場を構えるベトナム・バクニン省のイエンフォン工業団地で仕事が終わり帰宅する従業員たち(資料写真、2025年12月26日、写真:AP/アフロ)

 工場が中国からベトナムに移れば、中国で雇用が失われる。かつ各種の税金が中国に落ちなくなる。日本でも1990年頃から2000年代初頭にかけて多くの工場が中国や東南アジアに移転した。それは日本が活力を失う原因の一つになった。今まさに中国で同じようなことが起きようとしている。

 昨年トランプ関税が発表された時、ベトナムは大いに慌てた。株式市場は暴落した。しかしこれまでのところそれは杞憂であった。ベトナム経済は中国から米国への迂回輸出の拠点として活況を呈している。米中対立でベトナムは漁夫の利を得ているというわけだ。

 中国はこの動きを苦々しく思っているはずだが、今のところ表だった行動には出ていない。一方、新たにベトナム駐在米国大使になるジェニファー・ウィックス・マクナマラ氏は、ベトナムの米国に対する貿易黒字の削減に精力的に取り組むと言っている。

 ベトナムは迂回輸出の拠点という構図の維持に必死だ。ベトナムの人口ボーナスは2036年までに終わるとされるが、政府はそれまでに1人当たりGDPを1万ドルにしたいと考えている。そのためにもインフラを整備する必要がある。