選挙現場で何が起きていたのか?「熱気なき圧勝」の違和感

 ひとつの政党が衆議院の3分の2を超える戦後最多の圧倒的な議席を獲得できたのはなぜか。政治学者や選挙の専門家などによるさまざまな検証が始まっている。

 理由は多岐にわたるだろうし、複雑に絡み合っているので、総論的な分析は専門家に任せて、本稿では選挙後に取材した落選前職や政党関係者ら現場の声から何が起きていたのか考えてみる。

「公示前後の最初の頃は、街頭での反応は悪くなかった」(中道の東海ブロックの落選前職)

「選挙期間中、終始、そこまでの熱気は感じなかった。急な解散で有権者もついていけていない感じで、選挙は盛り上がっていないと思った」(自民のベテラン秘書)

「選挙戦中盤の新聞報道で『自維300議席超うかがう』という情勢調査が出て以降、空気が変わった感じがした。相手の自民候補は政策ではなく『高市総理』と連呼し、相手が高市総理に見えた」(中道の東京ブロックの落選前職)

 大惨敗した中道ながら「街頭での反応は悪くない」一方で、圧勝した自民でも「熱気はなかった」。これは、選挙土壌が大きく変わったことを意味する。

 選挙運動と言えば、候補者や陣営が街頭に立って、名前や政策を訴え、ビラを配って支持を呼び掛けるもの。その訴えをどれだけの有権者が立ち止まって聞いてくれるか、ビラを受け取ってくれるか、というのが「反応」や「盛り上がり」の指標だった。

 しかし、今回はこれまでにも増して、選挙運動はネット空間で行われ、SNSや動画コンテンツが大きく影響した。そこで力を発揮したのは、資金力のある自民党が力を入れたネット広告だった。

 話題になった「日本列島を、強く豊かに」と高市首相(自民党総裁)が呼びかけるショート動画が、選挙期間中に再生回数1億5000万回を超えたのは、自民がネット有料広告として配信し、クリックしなくても自動再生されたからだ。

 これは一例にすぎないが、自民党が「ネット空中戦」に長けていたのは間違いない。

「選挙期間中に唯一、熱気を感じたのは、高市総理が応援に入った時です。何千もの人が集まり、スマホで写真を撮っていた。『高市さんを一目見たい』という熱。これが“推し活”なのかと」(自民の東京ブロック候補の陣営関係者)