NATOの概要とNATOの欧州化

 NATOは、1949年にワシントンD.C.で署名された北大西洋条約に基づき、ソ連の封じ込めを目的として発足した。

 加盟国の集団防衛を含め、加盟国の自由および安全保障を政治面・軍事面で保障するための集団防衛体制を構築する軍事同盟組織で、現加盟国は32カ国である。

 軍事面では、紛争の平和的解決にコミットし、外交的努力が実らなかった際には、危機管理のための軍事的オペレーションを北大西洋条約第5条 (集団防衛)等に基づき遂行する。

 その第5条 (集団防衛)は、次のように定めている。

●欧州または北米における1または2以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。

●締約国は、武力攻撃が行われたときは、国連憲章の認める個別的または集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復しおよび維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的におよび共同して直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を援助する。

(出典:外務省「北大西洋条約機構について」令和8年1月)

 NATO機構は、加盟国首脳や外交・国防相レベルの最高意思決定機関(議長:NATO事務局長)である北大西洋理事会(NAC)の下、同理事会に行政的支援および助言を提供する「文民機構」と軍事面で補佐する「軍事機構」で構成される。

 軍事機構は、加盟国参謀総長や常駐軍事代表レベルで開催される「軍事委員会」の下に、軍事作戦の計画作成および実施を担任する「作戦連合軍(ACO)」と同盟の軍事能力の変革や改善を主導する「変革連合軍(ACT)」を置く。

 その中心は、あくまでACOであり、ベルギーのモンスにある連合軍最高司令部(SHAPE)において連合軍最高司令官(SACEUR)が多国籍統合作戦の指揮を執る。

 現在のSACEURは、米空軍のアレクサス・G・グリンケウィッチ大将である。

 ACOは、地域ごとに防衛を担任する3つの統合軍司令部と、陸海空3軍種ごとの連合陸軍司令部(トルコ・イズミル)・連合海軍司令部(英国・ノースウッド)・連合空軍司令部(ドイツ・ラムシュタイン)およびACOの全般後方支援・兵站(ロジスティクス)を担う統合支援司令部(ドイツ・ウルム)から構成される。

 統合軍司令部については、NATO戦域を東側、南側および北側の3つに分け担任させている。

 東側にはオランダのリンブルフ州ブルンスムに司令部を置くブルンスム統合軍司令部(JFC Brunssum)、南側にはイタリアのナポリに司令部を置くナポリ統合軍司令部(JFC Naples)、北側には米国のノーフォークに司令部を置くノーフォーク統合軍司令部(JFC Norfolk)を配置し、それぞれ欧州中央戦域、地中海・黒海戦域、そして大西洋・北極圏戦域の防衛を分担させる構図である。

 前記の通り、NATO加盟国は、これまで米軍将官が務めてきたナポリ統合軍司令部とノーフォーク統合軍司令部の司令官を、今後はそれぞれイタリアと英国が担うことで合意した。

 ブルンスム統合軍司令官はこれまでも欧州側が務めてきたが、今後はドイツとポーランドが輪番で務めることとなり、NATO全域の地域別統合軍司令官がすべて、欧州の将官に取って代わることになった。

 まさに、NATOの欧州化であり、時代の変化を画する象徴的出来事といっても過言ではなかろう。