スパコンを超えた量子コンピュータ
「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」展示風景 久保田晃弘+QIQB《Quantum Computer Art Studies》2025-2026年
こうした量子の不思議な性質を積極的に操作・制御し、活用しているのが「量子技術」だ。量子力学の誕生から100年の間に様々な新しい技術が生み出されてきたが、その最大の成果といえるのが「量子コンピュータ」。1985年にイギリスの物理学者デイヴィッド・ドイチュが量子コンピュータの理論をつくり、世界が工学的な実装に向けて動き出した。日本が果たした役割も大きく、1999年にはNECの研究グループが超伝導を用いた世界初の量子ビット実験に成功。超伝導チップで量子の「重ね合わせ」を作り出している。
そして2023年、理化学研究所にて国産初の量子コンピュータ「叡」が稼働開始。この年には富士通、大阪大学で2号機、3号機が公開され、日本の「国産量子コンピュータ元年」となった。
では、量子コンピュータはどれほどすごいものなのだろうか。現在のコンピュータは複数のトランジスタにデータを記憶させて計算を行う構造。トランジスタ50個に記憶できるのは50桁のデータ1個のみのため、記憶が終わったら次のデータを記憶させて再び計算を開始するという仕組みだ。だが、量子コンピュータの場合は、「量子もつれ」を用いることで、大量のデータを同時に記憶。量子ビット50個に1000兆個のデータを重ねて記憶することができる。米国グーグルは2019年に「同社の量子コンピュータが世界最速のスーパーコンピュータでも1万年かかる問題を200秒で解くことに成功した」と公表している。
前述の大阪・関西万博「エンタングル・モーメント」展(2025年8月)では、国産量子コンピュータ3号機(大阪大学)と会場をリアルタイムで接続し、来場者が遠隔で「触る」ことのできる試みが行われ、実際に量子コンピュータを稼働させて生まれた初の量子コンピュータアート作品が展示された。
東京都現代美術館で開催中の企画展「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」では、その流れを汲み、さらに追求した作品群(形態に加え、色彩論を展開した新作など)が発表され、古典コンピュータアート黎明時代の先駆者作品とともに展示されている。量子について、「実はよく知らないんだよね」という人にこそ見てほしい。まずは、その世界を「なんとなく」でいいから感じてみるべきだ。
「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」
会期:開催中~2026年5月6日(水・振休)
会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F、ホワイエほか
開室時間:10:00~18:00 ※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、2月24日(火)(2月23日、5月4日は開室)
お問い合わせ:03-5245-4111
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mission-infinity/


