宇宙空間にAI処理能力を構築する「三体計算星座」構想

 マスク氏の錬金術に投資家が群がる。xAIの請負業者はテネシー州で2つ目のデータセンター建設プロジェクトに着工した。しかし経営と財務状況への懸念から複数のxAI幹部が退社した。マスク氏がダボスで宇宙AIデータセンターの未来像を大々的に宣伝したのはそんな時だ。

 中国の動きも激しい。中国航天科技集団公司(CASC)は1月29日、5年以内に宇宙空間でAI向けデータセンターを構築する方針を発表。中国は20万基の衛星コンステレーション計画を国際機関に提出した。「宇宙AI処理能力」を国家レベルで確保するための基盤とみられる。

 昨年5月には之江実験室主導で共同開発された12機のコンピューティング衛星が打ち上げられた。宇宙空間にAI処理能力を持つクラウドコンピューティング基盤を構築する「三体計算星座」構想の一環で、最終的には約2800基の衛星で構成されるという。

 合計演算能力は1.0 ExaOPS(毎秒100京回の計算)を目指す。中国はペロブスカイト太陽電池など次世代太陽光パネル技術で世界をリードしており、宇宙での電力供給において製造・コスト面で圧倒的な強みを持つ。米中AI競争は宇宙空間でも激しさを増す。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。