“独身税”との批判も

 少子化対策と子育て支援の必要性に関しては、多くの国民が納得していると思われます。ただ、医療保険料に上乗せする形で財源を捻出する「子ども・子育て支援金」には批判も消えていません。

 その1つは、独身者らを含む全員が徴収の対象となることから生まれる不公平感です。子どものいない世帯や独身を決めた人は恩恵を受けず、徴収だけが行われるため、“独身税”として制度を揶揄する言葉も一時広がりました。実際には独身者だけが徴収対象ではないため、この言葉は正しくありません。

 ただ、この言い方が広がった背景には、実際に「独身税」を実施していた国々があったからかもしれません。よく知られているのは、社会主義体制下にあった東欧諸国です。ブルガリアは1968〜1989年にかけて独身者に課税。旧ソビエト連邦では、独身者に収入の6%という高率の税金を掛ける一方、結婚すると子どもが生まれるまで「子なし税」の課税対象になっていました。

 また日本でも戦時中の1941年、政府は「産めよ増やせよ」の大号令の下、「人口政策確立要綱」を策定。実現には至りませんでしたが、そのなかで独身者への課税を強化し、子どものいる家庭の負担を軽減するよう促しました。こうした発想は戦後も消えず、国会でも「独身税」「親子同居税」などの言葉で時々議論になりました。

 さらに1986年には日本経営者団体連盟(日経連)の大槻文平会長が記者会見で税制改革に関する所見を問われ、「独身税を取ったらいいと思う。独身者はカネが余って海外旅行を楽しんでいる」と発言し、波紋を呼んだことがあります。

 今回の「子ども・子育て支援金」に対するもう1つの批判は、対策の実効性に対する疑問が背景にあります。児童手当の拡充などは子育て世代への大きな支援になりそうですが、こども家庭庁が並べたメニューについては「対症療法に過ぎない」との批判が消えません。

 少子化の大きな原因の1つは、低賃金にあるとされています。経済的に余裕のない状況が続くと、結婚や出産、子育てはなかなか目に入ってきません。若い世代の豊かさをどう実現するのか。その道筋が見えて初めて、少子化対策は実効性を持つはずです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。高田氏の近著に『調査報道の戦後史 1945-2025』(旬報社)がある。