財務省OBから政治ジャーナリストに連絡が入った
今回の総選挙に大きく影響されるのはマーケットであろう。
高市総理は自ら「悲願」と語った食料品消費税の2年間ゼロ税率について、公示後、発言を封印した。1月19日の解散会見では、日本維新の会との連立合意の「検討する」という事実上の棚上げから「実現に向けた検討を加速する」と表現ぶりを変更した。財務省や麻生太郎副総裁始め、党内財政規律派は当然、反発した。
ところが翌20日、一時10年物国債が2.38%、超長期債の40年物国債が史上最高の4.215%(価格は大幅下落)をつけるなど債券市場に異変が生じる。
ダボスにいたベッセント米財務長官は「6シグマ」(5億回に1回起きる標準偏差)というオーバーな例えで、JGB(日本国債)金利が米長期債に波及していると懸念を表明した。同じくダボスにいた片山氏は「責任ある積極財政」の説明で火消しに走る。
アメリカではその時すでに、トランプ大統領のグリーンランド関税発言を巡って、デンマークの教員年金組合が米国債を売却する計画を発表するなどの報復合戦から長期金利が跳ね上がっていた。ベッセント財務長官はそれをJGBのせいにした。
JGBの金利が上がっている主要因は、元日の拙稿でも書いたように、植田日銀の量的引き締め(保有長期国債の持ち高圧縮)と利上げである。4回目の利上げを据え置いた1月23日の政策決定会合の総裁会見の後、ドル円相場は突然円高に振れる。その数時間後には更に円が急進。日米の通貨当局が「レートチェック」(介入準備のヒアリング)に入ったと報じられた。
この日米協調の口先介入は、ドル円が一時152円台に突入するなど急速な円高進行をもたらし、野党が「円安が物価高の元凶」と言って高市政権を攻撃することを困難にした。
アルゼンチンで親トランプ派のミレー大統領が誕生した後、米通貨当局がペソ買い介入に入ってミレー政権を援護した例もある。トランプ大統領は2月5日、日米首脳会談がワシントンで3月19日に行われると明かし、選挙で高市氏を全面支持と表明した。
米ワシントンでのイベントで話すトランプ大統領(写真:ロイター=共同)
ベッセント財務長官の真の狙いは、為替を通じて長期金利を抑えることにあったのではないか。底抜けの円安が債券売りを招き米長期債に波及するルートを金融市場の裁定機能を使って遮断する。
「6シグマ」という債券市場のブラックスワンを目の当たりにしてもなすすべのなかった日銀に対し、日米通貨当局が完全な利害の一致のもと、レートチェックを言わば「為替スタビライザー」として使ったのである。
しかし、こんな手はそう何度も使えるわけではない。財務省シンパのマスコミは盛んに長期金利上昇を煽り立てる。どうも世論工作の匂いがする。
ある政治ジャーナリストは選挙直前、財務省OBから連絡を受け「自民党が勝とうが負けようが、消費税減税は絶対ない」と言われたそうだ。市場エコノミストは消費減税が長期金利を押し上げると大合唱。
また、食料品ゼロ税率は一旦やってしまうと元に戻すのが困難なので、本則の税率を12%に上げる、という解説もまことしやかに飛び交っている。
自民党新人候補者が似たようなことを喋って撤回謝罪に追い込まれたが、火のない所に煙は立たない。高市総理は2年半後に衆参ダブル選挙をやって、消費税の問題を国民に問うことになるかも知れない。安倍内閣と全く同じパターンである。