便利さと引き換えに背負うリスクがあまりにも大きい

 サイバーセキュリティ企業のToken Securityが1月27日に発表した内容によれば、彼らの顧客企業を対象に調査したところ、22%の企業で従業員がOpenClawを組織内から利用していることが確認されたという。

 これらのすべてが無許可導入というわけではないだろうが、同社はOpenClawについて「従業員がIT部門の承認なしに導入できる強力な自律エージェント」であり、セキュリティ上の事故が起きる前に適切な手段を講じなければならないと警告している。

 セキュリティ以外の問題も無視できない。OpenClawは1つのタスクを実行するために大量の処理を裏側で行うため、単純なタスクを実行させているだけで、トータルで月に数十万円のAPI請求が発生したケースが報告されている

 また、AIが指示を誤解して重要なファイルを削除したり、間違った相手にメールを送ったりするリスクもある。ファイル操作の権限を持っているがゆえに、AIの「勘違い」が取り返しのつかない実害につながりかねない。

 結局のところ、OpenClawに対する批判の核心は「パソコンの操作について、全権限に近い権限を、騙されやすいAIに渡している」という点に集約される。セキュリティの専門家は、OpenClawを使うなら個人情報が入っていない隔離された仮想マシンで動かすこと、またメインのパソコンでは絶対に使わないことを推奨している。便利さと引き換えに背負うリスクが、現時点ではあまりにも大きいと言わざるを得ない。

 便利なAIエージェント技術の進化はうれしい話だが、現時点でOpenClawは、先端テクノロジーを試してみたいという熱意と、それを安全に実行できる知識を持つ研究者や愛好家のためのもののようだ。

 とはいえ、最近のAI技術の進化を思えば、それが私たち一般の人々にも安全に使えるようになるまで、そう長く待つ必要はないだろう。脱皮を繰り返して大きくなるロブスターのように、今後もさまざまな変遷を経て、広く使われるツールになることをOpenClawに期待したい。

小林 啓倫(こばやし・あきひと)
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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