狂気の皇帝
トランプの振る舞いは一段と常軌を逸しているように見える。
今年の初め以降だけを見ても、ベネズエラで軍事作戦を実行し、イランへの介入を明言し、グリーンランドを併合すると脅しをかけ、覆面姿の連邦職員を数千人もミネソタに送り込み、連邦準備理事会(FRB)議長のジェローム・パウエルや大手金融機関JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモンを相手に訴訟を起こしている。
これはすべて3週間で起きたことで、大統領としての任期はまだ3年残っている。
困惑する西側の外交官たちは、トランプに意見できる人や、いざとなったら意見してもいいと思っている人は彼の周囲に一人もいないと話す。
しかもこの問題は政権内にとどまらず、米国のエスタブリッシュメント(支配層)全体にも及んでいる。
「人々は率直に意見を述べるのをためらっているし、そのためらいについて率直に語ることもためらっている」。ダボスでビル・ゲイツはそう述べた。
自分に歯向かう者がいれば誰であろうと攻撃する傾向がトランプにはある。それを踏まえれば、怖がるのは合理的な反応だ。たとえそれが特に立派なことではないとしてもだ。
それ以上に怖いのは、トランプ政権があと3年続く以上、大統領の常軌を逸した行動が大きな危機を――世界経済から国際政治システム、米国自体の民主主義や社会の安定性に至る幅広い分野で――誘発する可能性が非常に高いことだ。
こうした状況下では、米国からのデリスキングは米国の同盟国にとって唯一の合理的な戦略に見える。
だが、米国が依然として支配的な大国である以上、同盟国以外の国々にできることはそれほど多くない。
トランプのグリーンランド併合計画は、国際システムと西側の同盟の下に仕掛けられた爆弾だった。その信管はダボスで外されたように見える。
だが、トランプ爆弾のいずれか一つは、遅かれ早かれ爆発する公算が大きい。
(文中敬称略)