米国からのデリスキングは可能か?

 米国から本当にデリスキングするとなれば、それは貿易以外の分野にも及ぶ。例えば金融、技術、軍事装備品をはじめとする戦略的に重要な分野のすべてを網羅しなければならないだろう。

 これら3分野のすべてを米国が牛耳っていることを踏まえれば、このデリスキングは大変な難題だ。ひょっとしたら達成できないかもしれない。

 欧州の人工知能(AI)スタートアップ企業の筆頭とされるミストラルの創業者で、最高経営責任者(CEO)でもあるアーサー・メンシュは、ダボス会議のセッションでこのテクノロジーの難題を説明した。

 それによると、欧州は米国の技術に大きく依存する体制を作ってきた。その結果、今ではクラウドコンピューティングなどデジタルサービスの約80%を米国から輸入している。

 メンシュに言わせれば、欧州はAI開発の岐路に立たされている。

「今後数年間に欧州が直面する最大のリスクは、AI植民地になることだ」とし、「デジタルサービスとAIの95%を米国から輸入する」事態になりかねないと語った。

 もしそうなれば、欧州の主権は深刻なリスクにさらされる。なぜなら欧州の産業が丸ごと、「米国がその気になればスイッチを切ることができるテクノロジー上で稼働する」ことになるからだ。

 だが、そのメンシュが言うには、AIの開発は米国の技術への依存度を大幅に引き下げる機会も欧州に与える。

 AIはソフトウエアやデジタルサービスの新しい開発方法をもたらしてくれると見られるからだ。

 もし欧州が欧州のソリューションを選ぶ断固たる決断を下せば、米国の技術への過度の依存から抜け出し始めることができるという。

NATOの行方

 軍事装備品の購入については、米国からの多角化が少しは容易だ。欧州には規模の大きな防衛企業があるからだ。だが、軍事計画なるものがそこで大きく立ちはだかる。

 欧州の軍事計画の大半は、北大西洋条約機構(NATO)という米国主導の組織を通じて行われる(NATOのある高官はかつて米国を「チームの主将」になぞらえた)。

 だが、その米国の脅威から身を守らねばならないとしたらどうなるだろう。

 カナダはすでに、万が一にもし米国と戦争することになったらどう戦うかという詳細な計画を練っており、その概要は先日、全国紙「グローブ・アンド・メール」で報じられた。

 より一般的に言うなら、米国の同盟国の多くは戦略上の大きな問題について自力で考える習慣を再度身につける必要がある。つまり、米国政府の指導を受けずに考えるのだ。

 フランスはこれまでもずっと、米国とは一定の距離を保とうとしてきた。その意味では、この知的革命のリード役にはうってつけだ。

 外相のジャン・ノエル・バロがダボスで語っていたように、「これはフランスが10年前から言っていることだ。欧州には戦略的自律性が必要なのだ」。

 確かに、米国とは距離を置かねばならないというフランスの信念は1950年代、シャルル・ドゴールが指導者だった時代にまでさかのぼる。