社会に必要な元受刑者の受け入れ基盤

──本書を通して、特に少年事件では「被害者の権利保障」「加害者のプライバシー」「加害者支援」などさまざまなことが非常に難しいバランスで積み上がっていることを痛感しました。

山﨑:最優先されるべきなのは、言うまでもなく被害者の支援と権利です。その一方で、加害者支援は再犯防止につながり、その結果、被害者が再び深い悲しみに沈む事態を防ぐことにつながります。

 ただし、加害者が「更生した」とされながら、謝罪や償いがなされない場合、被害者側の「許せない」という感情が強まることもあります。加害者の更生と償い、そして被害者の気持ちがどこかで交わる点があるはずだと私は考えています。

──ただ、その「調和点」は事件の被害者、加害者によってそれぞれ異なるため、見極めが難しいとも感じます。

山﨑:そうですね。特に刑務所は「懲らしめ」の場であり、償いや謝罪、更生と正面から向き合うことが構造的に難しい場所です。刑務所の在り方が変わらなければ、被害者が受け入れられるような更生や償いは成立しにくいのではないかと思っています。

──少年事件の加害者や被害者、及びその家族に対して、私たち社会が考えなければならないことがありましたら、教えてください。

山﨑:特に刑務所から出た元受刑者に対しては、社会が受け入れる基盤をしっかりと構築していく必要があると考えています。具体的には「住む場所」「働く場所」「居場所」の3つです。

 住居については家族の元に戻ることもあれば、更生保護施設、自立準備ホーム、福祉施設などで暮らすことも可能です。必要に応じて、居住支援法人が賃貸契約などをサポートすることもあり、比較的仕組みが整っていると言えるでしょう。けれども、「働く場所」は十分とは言えません。

 刑務所出所者や元受刑者を積極的に雇用する「協力雇用主」と呼ばれる企業は、全国に約2万5000社あります。けれども、実際に雇用している企業となると、その約4%にとどまっています。

 再犯防止のためには安定した就労が非常に重要です。法務省のデータによると、仕事がない人の再犯率は仕事がある人の約3倍とされています。

 さらに「居場所」も重要です。居場所がなければ、元受刑者は事件を起こした当時の仲間や刑務所で知り合った人間関係に頼りがちになります。すると、再犯の可能性は必然的に高くなります。

 こうして彼らが抱える問題を俯瞰すると、私たちが考えなければならないことは明白です。住む場所を用意し、働く場所を確保し、社会の中に居場所をつくる。これが再犯防止と被害者の保護につながるのだと思います。

山﨑 裕侍(やまざき・ゆうじ)
北海道放送(HBC) 報道部デスク
1971年生まれ。北海道千歳市出身。94年に日本大学文理学部を卒業後、制作会社「パオネットワーク」に入社。テレビ朝日系『ニュースステーション』『報道ステーション』でディレクターを務め、死刑制度や犯罪被害者、少年事件などを取材。2006年、北海道放送に中途入社。警察・政治キャップや統括編集長を経て、2022年4月より現職。日本民間放送連盟賞・ギャラクシー賞・文化庁芸術祭優秀賞・放送文化基金賞などの受賞歴がある。

関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。