拘禁反応による妄想に支配された準主犯格B

山﨑:再犯は絶対に許されないことです。新たな被害者を生むだけでなく、最初の被害者やその関係者を再び苦しめる行為だからです。

 さらに、再犯は「刑務所から出た人間はまた事件を起こす」という負のイメージを社会に植え付けます。その結果、真剣に社会復帰を目指す元受刑者に対する風当たりが、より強くなってしまう。そういう意味でも、再犯は決して許されるものではありません。

──山﨑さんはBの再犯について、綾瀬事件による服役中に生じた拘禁反応による妄想も一因ではないかと指摘しています。

山﨑:彼が刑務所内で拘禁反応を示していたことは、比較的早い段階から把握していました。出所直後にも、妄想的な言動があったという話も耳にしていました。

 再犯事件を取材する中で、本人に手紙や面会で犯行理由を尋ねました。裏付けを取っていくと、彼の説明と客観的な事実が、どうも噛み合わない。次第に、彼が周囲の人とは別の世界を見ているのではないかと感じるようになりました。

 彼の義兄(実姉の夫)に話を聞くと、家族に対しても強い妄想を抱き、疑い深く、理解不能な言動があったそうです。精神医学の診断名や診断基準を取りまとめたマニュアルを調べると、Bの状態が妄想性人格障害や妄想性障害の項目に多く当てはまることが分かりました。

 彼の症状について説明したところ、犯罪精神医学の専門家からも「その傾向があるだろう」との見解を得ています。Bは妄想に支配され、暴走した末に再犯に至ったのではないか。私はそう考えています。

──Bが妄想によって再犯したということを加味すると、彼の再犯を防ぐために欠けていたものは何だったのでしょうか。

山﨑:刑務所内で、拘禁反応や妄想に対する治療が行われるべきだったと思います。当時の弁護士から聞いたのですが、刑務所ではそのような治療は一切施されなかったようです。

 刑務所で治療がなされなければ、出所後にするしかありません。その一端を担うのは、加害者の家族です。しかし、本人に病識がなければ通院につなげることは難しく、その負担は家族にのしかかります。

 だからこそ、まずは刑務所内で可能な範囲で適切に治療する必要があります。さらに、出所後も治療を継続させるための支援体制も不可欠です。そうでないと、精神疾患の克服は極めて困難ではないかと思います。