「参政党はどこか批判が難しい」
──本書の中で参政党の主張を「思い付きの羅列」としながらも、「この政党が急速に支持を広げた理由を真剣に考える必要がある」と書かれています。
山口:今回の衆議院選挙でも190人の候補者を擁立しました。できて間もない政党なのに全国に組織を作り、党員を集めています。この組織力はすごいですね。資金力もあります。参政党を応援する人たちのインセンティブがどこにあるのか、そのあたりは真剣に見ていきたいと思います。
──移民とグローバリゼーションを敵視する方向性はそのままトランプ政権と重なります。
山口:偏狭なナショナリズムですね。加えて、反知性主義です。科学や知性を否定する反ワクチンなどの主張も見られます。さらに、消費税廃止など目につきやすいばら撒き政策も掲げています。1つのテーマの議論で行き詰まっても、全く異なる別のテーマがかたわらに用意されていて、どこか批判が難しい政党という印象があります。
──高齢化で伝統的な政党の支持者は年々減っていますから、このままいくと参政党は一角を占める存在になっていく可能性もあるのではないでしょうか。

山口:あり得ると思います。先日の福井県知事選挙は印象的でした。「日本は単一民族」という排外主義的な発言を繰り返した若い候補者を参政党が選挙終盤で少し応援したら僅差で逆転勝利してしまった。これはこれからの政治の可能性を示唆する選挙だったとショックを受けました。
──本書では、SNSが政治に与える巨大なインパクトについてもお考えを書かれています。真っ当なSNS規制を作ることは可能だと思いますか?
山口:SNSにあふれかえる虚偽と誹謗中傷をどうやって防ぐか。サービスを提供しているプラットフォーマーは膨大に儲けながら、虚偽や誹謗中傷を放置している。もちろん膨大な件数の投稿をチェックする難しさは分かりますが、AIなどを活用すれば明らかに不当なものは排除できるはずです。そうしないとSNSは人を破壊する道具になってしまう。
そこにアテンションエコノミーが好ましくない形で関わる場合もあります。虚偽や攻撃でさえ売り物になる。そういうことに励むユーチューバーなども増えている。
網羅的にできないまでも、虚偽を使った利益目的の発信者に対してはプラットフォーマーが損害賠償請求をするべきです。デタラメで儲けたら後で怖いことになる。そういう歯止めを作ることが必要だと思います。
山口 二郎 (やまぐち・じろう)
政治学者、政治運動家、法政大学法学部教授
1958年、岡山県生まれ。東京大学法学部卒業。『政権交代とは何だったのか』『民主主義は終わるのか』(共に岩波新書)、『資本主義と民主主義の終焉』(水野和夫との共著/祥伝社新書)、『長期政権のあと』(佐藤優との共著/祥伝社新書)など著書多数。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。
