高まる反発、トランプ政権揺るがす

 トランプ政権の強硬な移民排除政策に対しては、反発の声も全米で沸き起こっています。

 犠牲者が相次いだミネソタ州では、グッドさんの死亡後、数万人規模の抗議デモが行われたほか、業界を越えたゼネスト(一斉ストライキ)も実施されました。またウォルズ知事はトランプ大統領と電話で会談し、ICEなど連邦政府の執行官を州内から撤退させるよう要請しました。

 反発はミネソタ州以外にも広がり、いくつかの州では大規模なデモが実施されました。抗議の声はとどまるところを知りません。ICEは不法移民を追放して米国民を安全にするのが本来の役目ですが、移民ではない米国市民を銃撃するなど、逆に国民を危険な目にあわせているとの批判が増幅しているのです。

 連邦議会でも動きが出てきました。

 野党民主党はトランプ大統領に対し、ICEの責任者であるノーム国土安全保障長官の解任を求め、受け入れられない場合は弾劾手続きに入ると表明しました。与党共和党からも、ICEの関係者を議会に出頭させて聴取する案が浮上してきたほか、大統領に対して不法移民政策を見直すよう求める声も出ています。

 こうしたなか、トランプ氏の強硬姿勢もトーンダウンしてきました。

 例えば、抗議行動の激しいミネソタ州に関しては、不法移民排除に非協力的だとして州の姿勢を非難するばかりでしたが、最近は「ICEも間違えることはある」とも発言。また、国境問題の責任者を同州に派遣し、事態収拾に乗り出しています。

 今年秋の中間選挙に悪い影響を与えかねないとの判断が大統領の態度軟化の背景にあり、トランプ政権の大きな転換点になるかもしれないという見方も出ています。

西村 卓也(にしむら・たくや)
フリーランス記者。札幌市出身。早稲田大学卒業後、北海道新聞社へ。首相官邸キャップ、米ワシントン支局長、論説主幹などを歴任し、2023年からフリー。日本外国特派員協会会員。ワシントンの日本関連リサーチセンター“Asia Policy Point”シニアフェロー。「日本のいま」を世界に紹介するニュース&コメンタリー「J Update」(英文)を更新中。

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