そもそもICEとはどんな組織か
市民にも銃を向けるICEとはどのような組織なのでしょう。
米国では、2001年の米同時多発テロの翌年、国土安全保障省(DHS)が発足しました。そして2003年にDHSの捜査部門を統合して発足したのがICEです。前述した税関・国境警備局(CBP)および米国市民権・移民局(USCIS: United States Citizenship and Immigration Services)と並び、ICEはDHSの主要機関の1つ。不法移民の捜索や収容、本国送還などを主な任務としています。
ICEの組織は、①麻薬や武器などの密輸や人身売買などの犯罪捜査にあたる部門、②逮捕者の収容、移送を担当する部門の2つに分かれています。米国内外に事務所を開設しているほか、米国内に200を超える収容施設を設置。職員数は全体で約2万人、年間予算は80億ドル(約1.2兆円)という巨大組織です。
2024年の大統領選で不法移民の取り締まりを公約に掲げたトランプ氏は2期目の就任後、不法移民の摘発に力を入れます。ICEの職員数や予算を拡充し、捜査官を全米各州に派遣しました。
特別な訓練を受けた捜査官は、「身バレ」を防ぐためマスク姿で活動するのが定番。その異様な様子について、ミネソタ州のウォルツ知事は、ナチス・ドイツの秘密警察になぞらえて「現代のゲシュタポだ」と非難しています。
捜査官らは病院、学校、職場などあらゆる施設で不法移民を探し回ります。2025年9月にはジョージア州の韓国・現代自動車のバッテリー工場で475人を逮捕しました。外国人労働力に頼る建設業などを含め、摘発は止む気配がありません。
トランプ氏はICEの活動を支援するため、軍や州兵を出動させる強硬策を取っています。米国には1798年制定の「敵性外国人法」があります。米国の戦争中、敵国人を国外追放する権限を大統領に与えるもので、トランプ氏はこれを適用し、本来の法手続きを省いて移民を送還する手法も用いています。
2025年12月時点で、ICEは約6万8000人を拘束しました。収容施設では、劣悪な衛生状態、粗末な食事、不十分な医療体制がまん延して死者も出るなど、人権侵害が指摘されています。
第2次トランプ政権下で送還された移民は約20万人に達するとされていますが、大統領が目標とする年間100万人には及びません。
歴史的には、トランプ政権以上に移民送還の実績を上げた政権があります。民主党のオバマ政権(2009〜2017年)です。2期8年の在任中、約240万人の不法移民を本国に送還しました。そのため、大統領の別名「最高司令官(Commander-in-Chief)」ならぬ「最高追放官(Deporter-in-Chief)」とやゆされましたが、現在のような銃撃事件多発を招いていたわけではありません。