ドジャースが独占状態の日本市場を明らかに意識しだしたブルージェイズ
ブルージェイズの今オフを語る上で、戦力補強と同じ重さで見逃せないのが「日本市場」への明確な傾斜である。
現在のメジャーリーグにおいて、日本との結節点を最も強固に築いているのは言うまでもなくドジャースだ。大谷を筆頭に山本由伸、佐々木朗希と日本人スターを次々と抱え込み、競技面とビジネス面の双方で、日本市場を半ば“独占”している。
ブルージェイズは、その構図を強く意識している。岡本の獲得は戦力補強であると同時に、日本の野球ファンに対する極めて分かりやすいメッセージだった。日本ハムと楽天、韓国KBOに在籍したポンセを迎え入れたことも日韓両国のアジアマーケティングに重きを置いていることは間違いない。
さらに舞台裏では日本ハムのエース・伊藤大海、阪神タイガースの主砲・佐藤輝明といった、早ければ2026年オフにもポスティングシステムでのMLB挑戦が取り沙汰される選手についても、調査を進めているとの情報が複数の関係者の間で共有されている。
重要なのは、これが一過性の話題づくりではない点だ。ドジャースが「スターの存在」を起点に日本市場を拡張してきたのに対し、ブルージェイズは編成、スカウティング、マーケティングを並行させながら、後発なりの戦い方を模索している。大谷という巨大な軸がある限り、日本市場の重心がドジャース側に傾くのは必然だ。だからこそブルージェイズは真正面から同じ土俵に立つ覚悟を固め、日本という市場を“第2の主戦場”に据え始めたのである。
実はブルージェイズの日本戦略が、単なる机上の構想ではないことを示した象徴的な出来事がある。2025年11月24日、トヨタアリーナ東京で行われたプロボクシングWBC世界バンタム級王座決定戦――井上拓真が那須川天心と激突し、新王者に輝いた一戦だ。
この日本国内で極めて高い注目度を集めたスポーツビッグイベントで、リング周辺に掲出されたスポンサー名の一つが、MLB球団のブルージェイズだった。
那須川天心(右)と井上拓真がベルトをかけて戦ったボクシングWBC世界バンタム級王座決定戦 。リング右手前の床にブルージェイズのロゴが見える(写真:スポーツ報知/アフロ)
野球とは無関係に見えるボクシング興行への協賛は、綿密なマーケティングの産物だったと見るべきだろう。日本のスポーツファンが最も集まる場を精査し、事前に“当たる場所”を見極めた上での投資。MLB機構側からは海外での広告掲出に関する手続き不備を理由に水面下で厳重注意を受けたものの裏を返せば、ブルージェイズが規約の境界線に触れるほど日本市場に前のめりになっていた証左でもある。