この数字は単なる金額の比較ではない。昨季ワールドシリーズの頂点を互いに争いながら第7戦で辛酸をなめさせられ、世界一の座を奪われたドジャースを上回る資金投入は敗北の屈辱を晴らしたいという、明確な意志の裏返しでもある。
ぜいたく税は覚悟の上
大谷を擁するドジャースがリーグの中心であり続けることは疑いようがない。しかし、その王座に真正面から挑むべく、異例の投資規模で市場を席巻しているのがブルージェイズなのである。
今オフのFA市場をあらためて俯瞰すると、ブルージェイズの支出額が放つ異様さが、よりくっきりと浮かび上がる。前出「ON SI」の算出によるとブルージェイズがFA契約に投下した総額3億5300万ドルは今オフ、メジャー30球団で最も高い数字となっている。
2位に位置するのが、シカゴ・カブスからFAとなっていた超大物外野手のカイル・タッカーらを獲得したドジャースの総計3億1450万ドル。繰り返すが、常に市場を主導してきた王者を金額ベースで明確に上回った事実は大きい。
さらに注目すべきは、支出の「質」である。ドジャースは大谷の契約に象徴されるように、繰り延べ払いを巧みに組み込んだ独自の資金運用で知られる。
一方、ブルージェイズの補強は、より直截的で即効性を重視したものだ。2026年シーズンに向けたCBT(競争力均衡税=通称「ぜいたく税」)対象年俸は3億1240万ドル(約486億円)に達する見通しとなっている。つまり、ぜいたく税の負担を覚悟した上での強気な編成とも言えるだろう。
この規模の投資は、単年の勝負に出た球団の数字ではない。むしろ、ドジャースという「西の帝国」と数年にわたって覇権を争う覚悟を示すものだ。
王者が築き上げた経済圏の内側にあえて土足で踏み込み、正面から殴り合いを挑む――。今オフのブルージェイズの数字は、明らかな宣戦布告そのものなのである。