日本ハム・伊藤、阪神・佐藤らNPBの日本人有力選手への調査と並行し、野球の枠を超えたアプローチで新規ファン層の開拓を狙う。ブルージェイズは今オフ、フィールドの外でもドジャースに「待った」をかける動きを、着実に進めていたのである。

 両者の補強姿勢を並べると、その思想の違いは明確だ。ドジャースは、すでに確立されたブランドと戦力を基盤に繰り延べ契約という高度な運営テクニックを駆使しながら王朝を持続させる「守りの帝国」である。

 一方、ブルージェイズは敗北の記憶を原点に、資金力と即効性を武器にした「攻めの帝国」を築こうとしている。

 ドジャースが“持つ者”として市場を動かす存在であるなら、ブルージェイズは“奪いに行く者”だ。FA支出額で王者を上回った今オフの動きは、その象徴に他ならない。短期的な勝敗だけでなく数年先の覇権構図までを視野に入れた編成は、両球団の間に一過性ではない緊張関係を生み出しつつある。

大谷の活躍で打ち立てられたMLBの新たな基準、そこに挑むブルージェイズの覚悟

 結局のところ、今オフのメジャーリーグを動かしているのは資金でも制度でもない。すべての起点にあるのは、やはり大谷という存在だ。

 日米のみならずカナダや中南米、欧州、アジアも含め世界を席巻する二刀流スーパースターがドジャースにもたらしたのは、勝利だけではない。「勝ち続けること」「市場を広げ続けること」を同時に成立させる“MLBの新たな基準”だった。

 ブルージェイズが約550億円を投じて挑んだのは王者のポジションだけではなく、その基準である。打倒・大谷、打倒・ドジャース――その旗印は敗者の叫びではない。リーグの重心を動かそうとする者だけに許された宣言だ。

 その挑戦が実を結ぶか否かは、まだ分からない。ただ一つ確かなのは大谷翔平という存在がいる限り、メジャーリーグは動き続け、挑戦者も現れ続けるという事実である。

 もし再びワールドシリーズの舞台で両者が相まみえることになれば、それは単なる覇権争いでは終わらない。西と東――2つの帝国のイデオロギーが激突するという、MLB全体を揺るがす大きな構図となるだろう。