医療現場で劇的に成果を上げているAI
AIによる知性の拡張が、具体的かつ劇的な成果を上げている典型は医療分野だと考えている。特に画像診断の領域では、AIはもはや専門医をしのぎつつある。
例えば、乳がん検診におけるマンモグラフィー読影では、AIの導入によってがんの発見率が20%向上したと報告された。さらに注目すべきことに、医師が診断に費やす時間を44%も削減できたという点も指摘されている。また、悪性黒色腫(メラノーマ)に代表される皮膚がんにおいては、医師の視認による診断が基本となるため、パターン認識を得意とするAIとの相性は極めて高い。
これらのデータが示すのは、「AIが医師に取って代わる」という単純な置き換えではない。AIが画像診断という「高度だが定型的な判別作業」を高速かつ正確に担うことで、医師は患者との対話や複雑な合併症の検討、そして最新の研究に基づいた個別治療の設計といった、より「人間的で総合的な判断」にリソースを集中できる。これこそが、AIと専門家が一緒に進化していく理想的な姿と言える。
研究にも人工知能の活用が欠かせなくなっている。慶應義塾大学先端生命科学研究所・分子腫瘍グループの研究室より(写真:齊藤康弘)