学び続けることの新たな意義
私たちは今、「覚えることの意義」や「学習することの意味」を、根底から問い直すべき段階に立たされている。AIが瞬時に膨大な知識を統合し、解を提示できる時代において、人間が学ぶべきことは何か。その答えは、AIとの対比の中に浮かび上がる「人間独自の役割」の再発見にあるといえる。
AI時代の学習とは、知識を脳内にコピーすることではない。AIという巨大な外部脳をいかに使いこなし、自分自身の思考をいかに遠くまで飛ばすかという「知の拡張」のプロセスそのものだ。
覚えることの意義が失われたわけではない。基礎的な知識がなければ、AIが提示する回答の妥当性を判断することすらできないからだ。しかし、学習のゴールは「正解に辿り着くこと」から、「問いを更新し続けること」へとシフトした。
AIが大学共通テストで高得点を取る時代だからこそ、私たちは、AIには解くべき理由が分からない「未解決の問い」を大切に考えて、そこを探究し続けなければならない。それこそが、AIと共に歩む未来において、人間が「研究」という営みを続ける唯一にして最大の意義だろう。
齊藤康弘(さいとう・やすひろ)
慶應義塾大学政策・メディア研究科(先端生命科学研究所)特任准教授として乳がんの基礎研究に携わる。2018年に慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任講師に着任する以前は、米国Beth Israel Deaconess Medical Center / Harvard Medical SchoolでResearch Fellowを務め、その前にはHuman Frontier Science Program Long-term FellowとしてカナダのPrincess Margaret Cancer Centreに在籍。2014年には株式会社ディー・エヌ・エーのDeNAライフサイエンスに入社し、遺伝子解析サービス「Mycode」の開発に従事。2011年には東京大学大学院医学系研究科 微生物学教室 助教として、胃がん発症の分子機序を研究した。北海道大学大学院理学院博士後期課程を修了(2011年)し博士号を取得。同大学院水産科学研究科博士前期課程修了(2006年)。同大学水産学部生物生産科学科卒業(2004年)。株式会社ステラ・メディックスのサイエンティフィックアドバイザーとフリーランスのサイエンティフィックライターとしても活動している。
◎慶應義塾大学政策・メディア研究科先端生命科学研究所分子腫瘍グループ(齊藤康弘ラボ)
◎Institute for Advanced Biosciences, Keio University Molecular Oncology Group