朝鮮半島への影響:軍拡スパイラルの可能性
米国の戦略的優先順位の低下は、朝鮮半島に最も直接的かつ深刻な影響をもたらす。
その理由は、朝鮮半島が「米国の抑止力」だけで均衡が保たれてきた地域だからである。
米国の後退は、以下のような「連鎖的な不安定化」をもたらし、従来の均衡を根本から揺るがす可能性がある。
①北朝鮮の挑発リスクの増大:米国の「空白」を突く行動
米国の関与が相対的に低下すれば、北朝鮮は次のような行動に出やすくなる。
・核・ミサイル実験の再開
・SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の実戦配備
・韓国・日本に対する威嚇的軍事行動
・中国・ロシアとの連携強化による「後ろ盾」の確保
北朝鮮は、米国の注意が西半球や国内に向かうほど、「今ならエスカレーションしても米国は本気で介入しない」と誤った認識に傾く可能性が高まる。
この誤認識こそが、朝鮮半島の最大の不安定要因である。
② 韓国の核武装論の再燃:同盟の不確実性が国内政治を揺らす
米国の後退は、韓国国内で長年くすぶってきた自主核武装論を一気に再燃させる。
韓国社会は今、次の両立不能のジレンマに直面している。
・米国の核の傘を信頼し続けるのか
・米国の後退を前提に自前の核抑止力を求めるのか
米国の後退は、以下のような「連鎖的な不安定化」をもたらし、従来の均衡を根本から揺るがす可能性がある。
さらに、韓国政府は次のような圧力にも晒される。
・米国依存を続ければ「従属的」と批判される
・自主核武装に動けば国際制裁のリスク
・いずれを選んでも国内政治が分断される
加えて、米国自身が同盟国への負担増を優先する中で、「韓国が核武装に踏み切った場合、米国がこれを黙認する可能性すら排除できない」
という新たな現実が浮上している。
米国の戦略的優先順位が変化するほど、韓国の核武装は「禁じられた選択肢」から「現実的な選択肢」へと位置づけが変わる可能性が高くなる。
つまり、韓国は安全保障と国内政治の両面で「二重の危機」に直面している。
③日韓協力の必要性の増大:しかし政治的対立が壁に
米国の後退は、日本と韓国に対し、「協力しなければ地域抑止が維持できない」という現実を突きつける。
・北朝鮮ミサイルへの共同対処
・情報共有(特に早期警戒)
・日本海での共同監視
・台湾有事への連携
しかし、歴史問題や政治的不信が根強く、「必要だが進まない」という構造的ジレンマが続く。
米国が強く仲介しない限り、日韓協力は前に進みにくい。だが、その米国が後退している。
④中国とロシアの影響力拡大:朝鮮半島の「多極化」
米国の後退は、北朝鮮だけでなく中国とロシアの影響力拡大も招く。
・中国は北朝鮮を「戦略的緩衝地帯」として支援強化
・ロシアはウクライナ戦争の見返りとして北朝鮮と軍事協力を深化
・北朝鮮は中露の後ろ盾を得て、より大胆な行動に出やすくなる
朝鮮半島は、米国の一極抑止 → 中国とロシアを含む多極的な力学へと変質しつつある。これは、地域の不安定化をさらに加速させる。
⑤ 結論:朝鮮半島は「最初に揺らぐ地域」になる
米国中心の秩序が揺らぐ中で、朝鮮半島は次の理由から最も不安定化しやすい。
・北朝鮮の誤算リスクが高い
・韓国の核武装論が現実味を帯びる
・日韓協力が進まない
・中国とロシアの影響力が増す
・米国の抑止力が相対的に低下する
つまり、朝鮮半島は「米国後退の影響が最初に顕在化する地域」であり、軍拡スパイラルが最も早く進む可能性が高い。