中国への影響:好機と脅威の2面性
今回のNDSは、中国にとって戦略的好機と新たな脅威の双方をもたらす。まず好機として、
・米国の本土防衛優先により、アジアへの関与が相対的に後退
・台湾非言及が、米国のコミットメント低下というシグナルになり得る
・同盟国の分断が進み、米国主導の包囲網が緩む
これらは、中国が地域での影響力を拡大しやすくなる環境を生み出す。
一方で脅威も存在する。
NDSは第1列島線の防衛強化を明確に打ち出しており、中国にとっては軍事的圧力の増大を意味する。
米国が本土優先へと戦略を転換するほど、「限定的な軍事衝突なら米国は全面介入しないのではないか」という誤算が生まれやすくなる。
その結果、中国は行動の自由度を得る一方で、誤算による衝突リスクが最も高まる局面に入りつつある。
ロシアとNATOへの影響
欧州の分断と抑止力の揺らぎ
欧州にとっても、今回のNDSは大きな衝撃となった。米国の戦略的優先順位がアジアと本土に移ることで、欧州は次のような圧力に直面する。
・米国の欧州優先度低下により、NATOの抑止力が相対的に弱まる
・防衛費5%要求が、加盟国間の負担格差を拡大し、政治的分断を生む
・ロシアにとっての戦略的好機となり、ウクライナ戦線やバルト海周辺での圧力が強まる
・欧州の自立防衛の限界が露呈し、米国依存から抜け出せない構造が再確認される
欧州は、米国中心の秩序が揺らぐ中で、「自立防衛を強化するのか」「米国依存を続けるのか」という両立不能のジレンマに直面している。
つまり欧州もまた、「米国中心の時代の終わり」を最も痛感する地域の一つとなりつつある。