相馬家との深い縁を感じる彝の代表作
「開館50周年記念 モダンアートの街・新宿」では、中村彝の中村屋時代、さらに下落合時代の代表作が展示されている。《麦藁帽子の自画像》(1911年)、《牛乳瓶のある静物》(1912年頃)はともに株式会社中村屋の所蔵品。フィンセント・ファン・ゴッホやポール・セザンヌからの影響が感じられる。
《カルピスの包み紙のある静物》(1923年)は下落合時代に制作された中村彝の代表作。カルピスの包み紙を敷いた小卓の上にアネモネを挿した染付の角瓶と、ボウルに重ねた植木鉢。背後には彝がこしらえたキリストの磔刑図が置かれている。
画中の多様なモチーフの中でも、とりわけタイトルにもうたわれているカルピスの水玉模様の包み紙に目が行く。カルピスは1919(大正8)年に発売された乳酸菌飲料。健康に良いとされ、中村屋創業者の相馬愛蔵は1920年頃に病中の中村彝にカルピスを贈ったという記録が残されている。鮮麗な印象をもつ魅力的な作品であるとともに、彝が中村屋を離れた後も相馬家との縁が続いていたことを物語る貴重な一枚といえよう。
中村屋は2014年、新宿本店の建て替えを機に商業ビル「新宿中村屋ビル」を開業。ビルの3階に「中村屋サロン美術館」が開設され、中村屋の所蔵品をはじめ、新進芸術家や地域に関する作品を紹介している。新宿のアートシーンを支える「場」としての活動を継続中だ。
50周年を迎えたSOMPO美術館
そしてもうひとつ、新宿アートシーンに欠かせない「場」として、本展の会場であるSOMPO美術館を挙げたい。SOMPO美術館は1976年、西新宿の高層ビル群のひとつである安田火災海上保険(現・損保ジャパン)本社ビル42階に東郷青児美術館として開館。設立の礎となったのが、東郷青児から寄託された自身の作品156点を含む計345点の作品だ。その後、美術館は経営母体の改組などにより4度名称が変更され、2020年からはSOMPO美術館として運営。同年に本社ビルに隣接する敷地に新館が建てられ、リニューアルオープンを果たしている。
東郷青児コレクションと並んでSOMPO美術館の顔といえる作品がフィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》だ。1987年に安田火災海上がクリスティーズロンドンにて約53億円で落札。1枚の絵画の価格として当時の史上最高額を記録し、バブル期の日本を象徴する出来事として海外でも大きく報じられた。《ひまわり》は現在常設展示されており、多くの人々にインスピレーションを与え続けている。
《ひまわり》を筆頭にした良質なコレクションの展示や意欲的な企画展の開催に加えて、SOMPO美術財団では新進作家の発掘・育成にも尽力。同財団が主催する公募コンクール「FACE」は、年齢・所属を問わない“誰でも参加できる新進作家の登竜門”として毎年多くの応募者を迎えている。
「アートの街」としてコミュニティを形成・発展させていくためには、支援者とその拠点となる支援の場が欠かせない。その土壌がある新宿からは、これからも多くの芸術家が巣立っていくだろう。
「開館50周年記念 モダンアートの街・新宿」
会期:開催中~2026年2月15日(日)
会場:SOMPO美術館
開館時間:10:00~18:00(金曜日は〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.sompo-museum.org/