[左]だんご3兄弟(NHK「おかあさんといっしょ」 より)[上]フレーミー[下]ぼてじん(上下ともにNHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供:横浜美術館
(ライター、構成作家:川岸 徹)
CM、教育番組、書籍、ゲームなど、多様なジャンルで親しみやすいコンテンツを作り出し、1990年代以降のメディアを牽引してきた佐藤雅彦。佐藤の創作活動の軌跡をたどる世界初の大規模個展「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」が横浜美術館で開幕した。
あのCMもこのCMも佐藤雅彦が作った
80年代から90年代にかけて、テレビではメロディやフレーズが妙に耳に残るCMが連日のように放映されていた。湖池屋「スコーンダンス」(1988)、「ポリンキーの秘密」(1990)、「ストリート・オブ・ドンタコス」(1994)。NEC「バザールでござーる」(1991)。JR東日本・91年春ダイヤ改正のCMで小泉今日子が出演した「ジャンジャカジャーン。」(1991)。萩原健一、和久井映見が起用されたサントリー「モルツ」(1992)。TOYOTA「カローラⅡにのって」(1994)は小沢健二の歌が印象的で、今でもすっと歌い出せるくらい記憶に焼き付いている。
これらのCMは当時、電通に勤務していたCMプランナー・佐藤雅彦によって作られたもの。ひとりの人間がこれだけのヒットCMを手がけたことに驚かされるが、以降も佐藤の活躍は続く。
撮影:STUDIO DUNK
佐藤は1994年に電通を退社し、企画事務所「TOPICS」を設立。ここで制作したプレイステーションソフト「I.Q Intelligent Qube」(1997)は売上本数101万本を、NHKの教育番組から生まれた「だんご3兄弟」(1999)はCD売上枚数380万枚を記録。1999年には慶應義塾大学環境情報学部教授に就任。同大学の佐藤雅彦研究室からはNHKの教育番組「ピタゴラスイッチ」が生まれている。
CM、教育番組、著書、ゲームなどジャンルを横断し数々のヒット作を積み上げてきた佐藤雅彦は、間違いなく90年代以降の日本を代表する表現者。だが、「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」を企画した横浜美術館の松永真太郎主席学芸員は「佐藤雅彦という名を知る人は、そう多くはないでしょう。大規模個展が開催されるのは今回が初めてで、他館への巡回もありません」と言う。
展覧会開催の記者発表会に登壇した佐藤雅彦自身も「意識的にメディアには出ないようにしている。“ピタゴラスイッチの仕掛け人”“だんご3兄弟を作った人”と、レッテル貼りされるのが嫌。私の名前ではなく、作ったものが世に出るのが正しい」と話している。
