職人の緊張感を前面に出したデザインとは?

「研ぐ」の遊び方について、武笠さんは「どこまで尖って研げるか。こだわって研いで欲しい。研いだあとはフィギュアに持たせてもいい。そして消しゴムである以上、もちろん学校に持っていっても問題ありません。」と笑って答えています。

 また、受験会場でマークシートをこの消しゴムで消していたら、隣の席の人が「なにそれ?」と振り返るかもしれません。つまり、遊び方も、使い方も、楽しみ方も想像力次第。自分なりの遊びを見つけられるのが、この「研ぐ」の魅力です。まさに、「研ぐ」は、100円で遊べる体験価値を提供しているガチャガチャです。

 もちろん、「研ぐ」のディスプレイPOPにもこだわりがありました。「消しゴムとしての用途以上に、研ぐ気分を楽しむものだということを伝えるにあたり、包丁を研いでいる職人の緊張感を前面に出したデザインにしました」(坂本さん)。

 この「研ぐ」にはザリガニワークスの「遊び心」と「真面目さ」が絶妙に混ざり合っています。くだらないように見えて、実はとても丁寧。大人も笑いながら「なぜだか惹かれてしまう」、そんなガチャガチャ。ある意味で、「研ぐ」は現代のガチャガチャ文化へのアンチテーゼとも言えるかもしれません。

ザリガニワークスの坂本さん(左)、武笠さん(右)

 今のガチャガチャ市場には、毎月650種類以上の新商品が登場しています。そのなかで、「研ぐ」は間違いなく異質で異彩です。

 決して派手ではないけれど、触れた人の原始的な遊び心を刺激する。そんな包丁型の消しゴムが、令和のガチャガチャ売り場に静かに、そして鋭く、風穴を開けている。ちょっと笑えて、少し誇らしくなって、なぜか心が研がれている。そんな体験が、あなたを待っているかもしれません。

尾松洋明 (おまつ・ひろあき)
ガチャガチャ評論家、ライター。ガチャガチャ市場や歴史、商品情報などについて、テレビをはじめ、ラジオ、雑誌などのメディアを通じて情報発信している。朝日新聞が運営するWEBサイト「withnwes」でコラムを連載。書籍「ガチャポンのアイディアノート」(オークラ出版)