「100円ガチャ」にはあり得ない作り込み

 とはいえ、ただ安くて面白ければいいというものではありません。驚くべきは、その作り込みです。デザインを担当した坂本さんは消しゴムとしての性能を保ちつつ、包丁のフォルムや厚み、質感にまでこだわった設計をしました。片刃のリアルな造形も、原型を何度も修正して完成度を高めたそうです。

「馬鹿馬鹿しいけど、ものづくりをするうえでストイックに取り組む姿勢を持つことで、商品に切れ味が増していくと思います」(坂本さん)。これは、高単価なおもちゃの話ではなく、100円のガチャガチャの話です。

 商品化を進めていく中で、武笠さんは価格が上がることも考えていたそうです。

「コストや流通を考えたら、やはり200円にはなるかもしれない。いくら何でも100円はないかなと思っていました。今の市場を見ても200円でも、『研ぐ』はインパクトがあります。成田さんから最終的に『価格は200円にします』と言われたら、納得していました」

 ところが、成田さんは最後まで100円にこだわりました。

「100円商品をあえて作る以上、ガチャガチャの歴史を踏まえて考えると、80年代の消しゴム企画と向き合うべきだなと考えました。どうやっても赤字になるため、エモさ重視の判断です。利益が一切ない以上、切れ味の良い企画にすべきという点でも『研ぐ』は今の気持ちを表現してくれています」(成田さん)

 成田さんは、SNSで話題になることも計算に入れたうえで「100円でやる」と決めていました。その覚悟には背筋が伸びる思いがします。