知らないうちに、勝手に仕事をする「同僚」が職場で増えているかもしれない(筆者がChatGPTで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

 月曜日の朝。経理担当の受信箱に、取引先からの請求書メールが届く。担当者はそれに淡々と対応する──代わりに、自律的に動作するアプリケーション「AIエージェント」に対して、こんな指示を与える。「届いている請求書メールから金額と支払期限を読み取って、社内の経費精算システムに入力し、承認者へ回しておいて」。

 するとAIエージェントは、経理担当者のIDで受信箱にログインし、届いているメールをチェック。大量のメールの中から請求に関するものを確認して経費精算システムの画面を開き、メールから得られた情報を入力して実行ボタンを押す。人間が手を動かすのは例外処理だけだ。

 こうして定型業務は自動化される。便利で、速くて、ミスも減る。いまAIエージェントは「デジタル従業員」などと例えられるようになっているが、上記の経理担当者にとっては、まさに頼れる「同僚」がチームに加わったように感じられるだろう。

 もっとも、その同僚が、この経理担当者が会社に黙って導入したものだったとしたらどうだろうか。会社にとっては、まるで見えない新入社員がいつのまにか社内で働き始めたのと同じ状態になる。これが本稿で扱う「シャドーエージェント」問題だ。

「シャドーエージェント」とは何か

 この現象の何が問題なのかを分かりやすくするために、企業内における「シャドーIT」の解説から始めよう。

 シャドーITの「シャドー(Shadow)」とは、文字通り「影」を意味する言葉だ。つまり日本語にすれば「影のIT」や「陰に隠れたIT」ということになる。

 なぜ陰に隠れているのか。それは「会社の中で正式な使用許可を得ていない」からだ。

 企業の従業員はかつて、企業側で用意されたITシステムしか業務内で使うことができなかった。というより、業務で使用するITシステムは、企業側で構築もしくは購入するしかなかった。

 それが変わり始めたのは、2000年代後半にクラウドサービスが普及した頃からである。

 従業員は社内のネット環境から、自分で契約したクラウドサービスを利用したり、またスマートフォンが普及し始めた2010年代以降は、手持ちの携帯端末からクラウドサービスにアクセスできるようになった。

 つまり企業側で用意したものでなくても、そして企業側が認知したものでなくても、ITシステムを利用可能になったのである。

 こうして「シャドーIT」という言葉が、企業が許可していないクラウドサービスやアプリが現場主導で使われ、IT部門が把握できない状態を指す文脈で広まった。

 この潮流に最近、別の言葉が加わっている。それは「シャドーAI」だ。