今後の世界はどうなっていくのか

 冒頭にも述べたように、このような大国の自国中心主義が頭をもたげてきた背景には、国境を越えた数々の地球規模課題を解決する上で、これまでのように国家主権を尊重しつつ国際協力を進めるという方法が限界を迎えているということがある。

 強大な軍事力を持つ大国間では、各大国がそれぞれの勢力圏を形成し、その中ではあくまで自らが主導して諸課題を解決していくことで、新しい地球規模の秩序を創造していくという構想が芽生えつつあるのかもしれない。

 このような現実の中で、大国以外の中小国は、自国と密接な関係にある大国の利害に自国の利害をうまく適合させて、大国が作った秩序の中で何とか生き延びていくというのも一つの知恵ではあろう。

 しかしそれでは、大国が関心を示さない地球規模課題はますます悪化していくであろうし、各国内において弱者がそのしわ寄せを受けることにもなりかねない。

 理想論としては、欧州諸国や日本、オーストラリア、カナダなど、リベラルな民主主義の価値観を共有している国々が主体となって、新しい国際協力の枠組みを築いていくことが望ましいのであろう。

 この際、これまでの国際協力の枠組みが、国家主権の原則との両立に限界を迎えているという認識に立つならば、トランプ政権などによる国家主権の侵害を非難するという方向だけでは問題は解決しない。

 新しい枠組みを構築するに当たっては、思い切って国家主権を乗り越えるため、潜在的な力を表に出していく知恵が必要だろう。

 現在の世界では、民間企業が日常的に国境を越えて活動することは普通になっており、また数多くの非営利団体(NPO)も国際的な活動が常識となっている。

 今後は各国政府だけに頼るのではなく、企業や団体が主体的に地球規模課題の解決において主導権を取っていくことなどが、局面打開のヒントになるのではないだろうか。

 しかし、その際にどうしても乗り越えることができないのが、軍事力の問題である。

 大国が他国に自国の意思を強要できるのは、その背景に強大な軍事力が控えているからである。

 新しく強力な国際協力の枠組みを創設していく上では、各国が持つ自衛のための軍事力を一定の秩序の下で組織化し、強国の武力による威嚇や行使を無効化するという集団安全保障の仕組みが不可欠である。

 この点において国連が有効に機能していない現状を考えると、そんなことは夢物語だと思えるかもしれない。

 しかしその国連は、2度の世界大戦の戦渦を繰り返さないことを主目的として、当時の強国であった米英両国の指導者が主導して作り上げた組織であった。

 今の米国内にも、トランプ主義とは一線を画し、この考えを受け継ぐ人々も少なくはない。

 日欧などのリベラルな民主主義国が主導して、新しい集団安全保障の枠組みを構想し、その下での新しい国際協力体制を具体的に描いていくことで、米国をその流れに引き込んでいくことは可能なのではないだろうか。

 大国による勢力圏分割に甘んじることをよしとしないのであれば、そのような努力を惜しむべきではないであろう。