グリーンランドの領有を夢見る米政権(生成AIで作図)
新しい国際秩序の胎動
米国のドナルド・トランプ大統領が、ベネズエラの領内で軍事力を行使し、同国のニコラス・マドゥロ大統領を拘束、米国に連行した。
これに対し、このような米国の行為は、現代の国際秩序の前提となっている独立国の主権を侵すものだとの指摘が、数多くなされている。
トランプ大統領はこれまでにも、「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」「パナマ運河の支配権を取り戻す」「(米国には)グリーンランドが必要だ」など、他国の主権を意に介さない発言を繰り返してきた。
世界一の超大国である米国の大統領がこのような態度を取り始めたことで、国家主権を侵すべからずという国際的な合意が、突然崩壊を始めたようにも感じられる。
しかしこれは、トランプ大統領の個性だけによるものなのだろうか?
おそらくそうではなく、第2次世界大戦後、国連の創設にあたって新たな国際秩序を築くための大前提として合意された国家主権の原則では処理しきれない数多くの問題が溢れ出る中で、新しい秩序に向けた大きな変動が起きつつあるのではないかと思われる。
これまで国際分業と貿易が拡大する中で、欧米諸国や日本などリベラルな民主主義を奉じる国々が中心となって、紛争の予防、公正な貿易の振興と密貿易の取り締まり、安定的な資源確保、環境の保護、移民の管理、極地や宇宙の開発など、国境を越える諸問題について様々な協力体制が築かれてきた。
しかし国際的な協力体制を推進すればするほど、貿易、金融、産業振興、出入国管理、知的財産保護など様々な領域で、各国がそれぞれの主権に基づいて行う政策が制限を受けるようになってきたのも事実である。
このような国際協力と国家主権の間の軋轢が頂点に達したことが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻や、トランプ大統領による他国家の主権を軽視する一連の外交政策の実施に繋がっていると考えることもできるのではないだろうか。
この大きな流れの中で、これからの世界はどのような方向に向かっていくのか、そのシナリオは大きく2つ考えられる。
一つのシナリオは、大国がその意思に基づいて軍事力を背景に国際的な諸問題をコントロールしていくというトランプ流の考え方の下で、いくつかの大国が世界をそれぞれの勢力圏に分割していくというものである。
そしてもう一つは、今や限界に達しつつある国際協力と国家主権維持の関係を改めて見直し、その間に新しいバランスを構築して各国による軍事力の行使を制限する仕組みを打ち立て、国際協調による問題解決を目指していくというものである。
日本にとっては、後者の方が望ましいと考えられるが、果たしてこのようなことを実現していく可能性はあるのか、そのヒントを得るため、まずは現状に至った流れを整理してみたい。