米国への寝返りを防ぐための補助金だが……

 先住民の伝統的な生業はトナカイ牧畜と漁労だ。もしトナカイ、コククジラ、アザラシなどの肉を野生動物の肉(ジビエ)に対する需要が大きいモスクワなどの都会に売ることができたなら、牧畜や狩猟はもっと盛んになっただろう。

 しかしながら、チュクチとモスクワはあまりにも離れているので、結果的にわずかな数の地元住民に肉を分配するしかないのが現状だ。生業が成り立たなければ、先住民はアラスカに集団移住したり、米国に助けを求めるかもしれない。

 ロシアにとって、先住民への物資や資金の分配は、安全保障政策の一環である。

 ロシア水産業ニュースサイトFishnews.ruによると、2025年にチュクチでは連邦予算を使った海獣の加工場が新たに3カ所建設された。2026年には連邦予算から8000万ルーブル(約1.6億円)以上が割り当てられ、加工場が2カ所新設される計画だ。また、2025年には、海獣の猟師286人に対して狩猟用モーターボート6艇が引き渡されている。

 トナカイ牧畜労働者や海獣の猟師の給与水準を大幅に引き上げたと、クズネツォフ知事は強調しているが、具体的数値は明らかでない。

 チュクチ自治管区は連邦政府に対し、2028年までに少なくとも15億ルーブル(約30億円)の支援を、トナカイ牧畜と海獣猟などのためにおこなうよう要請した。この予算には通信・航行機器だけでなく、衣類や靴などの費用も含まれている。

 極北の先住民が米国に寝返らないように、より一層補助金を出さなければならないが、ウクライナ戦争で財政は赤字状態だ。そこで、規制緩和して、先住民は伝統的な漁法であれば一定量、魚を獲っていいという法律を2026年9月1日から施行する予定だ。

 先住民の生業を維持するためだが、割り当てを得られるのが15歳以上だとか、釣竿を使ってはいけないとか、色々な規制があり、先住民の利益につながるのかどうか議論が続いている。