2025年12月20日、全日本フィギュアスケート選手権、男子シングル表彰式、左から2位の佐藤駿、優勝の鍵山優真、3位の三浦佳生 写真/西村尚己/アフロスポーツ
(松原孝臣:ライター)
佐藤、三浦は全日本初の表彰台
2月20日、全日本フィギュアスケート選手権の男子フリーが行われ、鍵山優真が優勝、佐藤駿が2位、三浦佳生が3位となった。
演技を終えたあとの表情は三者三様だった。鍵山は得点を見たあと、涙が止まらなかった。
トリプルアクセルがシングルになり、4回転トウループは転倒、フリーは2位の183.68点。
「悔しくて涙に出てしまい、不甲斐ない姿を見せてしまいました。ずっと立ち去りたかったんですけど」
佐藤は穏やかな笑顔だった。ショートプログラム5位で迎えたフリー、冒頭の4回転ルッツを成功させたのをはじめ、後半、わずかにミスはあったがフリーはトップ。「自分的には100点をあげたいぐらいの演技です」
9回目の出場で、初めて全日本での表彰台に上がった。
三浦は演技前の6分間練習で、4回転ループを3度連続で失敗。跳ぶか外すかぎりぎりまで迷ったが佐藤紀子、岡島功治両コーチに「跳べるよ」と言われ、覚悟を決めた。きれいに決めると流れに乗った。後半、疲労からミスはあったが、終わった瞬間、拳を握った。
「メダルってこんなに重たいんですね」
三浦も、初めての表彰台だった。
演技のすぐあとは違っていた表情は、でも表彰式や記者会見で3人になると変わった。喜びの涙もありつつ、そろって笑顔になった。そこには3人の関係がまざまざと表れていた。
三浦の、しみじみと語った言葉が象徴的だ。
「こんな漫画みたいなこともあるんですね」
鍵山と佐藤は同学年。三浦は2つ下の学年にあたる。3人は、小さな頃から競い合い、切磋琢磨してきた。同じ大会で3人が表彰台を占めることもある。
そんな3人の関係を伝えるエピソードは数多い。
2022年、大阪で行われた全日本選手権で三浦はショートプログラム13位と出遅れたがフリーで巻き返し、最終的に6位で終えた。
立て直せた要因を話す中で三浦は前日、鍵山と佐藤と大阪城を散策、ポケットモンスターのホゲータのぬいぐるみを買おうとしたが三浦は財布を持っていなかったため、鍵山に買ってもらった。そのとき、鍵山から「これ持っていたら大丈夫だから」と声をかけられ、佐藤には「お前なら大丈夫だよ」と言ったという。三浦は2人に感謝の言葉を捧げた。
その2カ月後、佐藤と三浦は四大陸選手権に出場、三浦が優勝し佐藤は3位でともに表彰台に上がった。
三浦は言った。
「駿と『一緒に表彰台に上ろう』と意気込んでいました。駿が、『1年前は(左肩の)手術だった』と言っていて、やっぱりつらかったと思います。その中でもめげずに頑張ってきて、こうしてメダルを獲得したことはこれからのスケート人生で駿に活気を与えてくれると思います。僕もうれしいです」
佐藤はこう語った。
「3位は佳生のおかげだと思っています。(6位の)ショートプログラムが終わって落ち込んでいたけど、佳生と一緒にゲームとかしたとき『一緒に表彰台に乗ろうね』と言ってくれて、そのおかげで今日リラックスしてできました」
